• ホラー

読者からいただいたクリスマスイブに起こった怖い出来事

その方をKさんとしよう。 Kさんは私が書いているオカルト雑誌の読者であり、クリスマスイブに不可解な体験をしたという。

次のページからは、Kさんから聞き取った内容を私なりにまとめ記したものである。

これは、二年前のクリスマスイブに体験した話です。 それからというものクリスマスイブになるとそれを思い出して今でも寒気を覚えます。

当時、大学二年生だった俺には、多少の友人はいたものの彼女はいませんでした。クリスマスイブに男同士で集まるのも虚しいと思い、その日は13時から22時までバイトを入れていました。 飲食店ということもあり、夜が更けるにつれ店は繁盛し、目が回るような忙しさでした。「クリスマスくらい家で大人しくしてろよ」……そんな毒づきたくなるような気持ちで、俺はひたすら働いていました。

バイトを終え、俺は徒歩15分ほどの場所にあるアパートへ向かいました。 その帰路、ある場所でふと足が止まりました。

そこは、普段なら雑草が茂り「売地」の看板が立っているだけの空き地です。近所の方からは、以前そこには30代の夫婦が住む一軒家があったと聞いていました。 なぜそんな場所で足を止めたのか。 いつもは看板が立っているはずのその場所に、赤、白、黄色の小さな電飾がキラキラと輝く、一台のクリスマスツリーが置かれていたからです。

綺麗だと思うよりも先に、「なぜこんな場所に?」という疑問が込み上げました。 ツリーにはライト以外の装飾も施されているようでしたが、明かりのせいでよく見えません。正体を確認しようと近寄った、その時でした。

「このツリー、綺麗ですよね」

背後から声をかけられ、振り返ると一人の男性が立っていました。30代後半から40代くらいでしょうか。彼は穏やかな微笑を浮かべ、じっとこちらを見ていました。

「……これは、あなたが?」と尋ねると、 「ええ、そうです」と彼は答えました。

その後、俺は「綺麗ですね」とか「クリスマスらしいですね」といった、ありきたりな言葉を返したと思います。男性も「いいですよね」と頷いていました。 俺がさらにツリーへ歩み寄り、間近で目を凝らしたとき、ライトに照らされた「装飾」の正体に気づきました。

それは、すべて女性の持ち物だったのです。

口紅、マニキュア、ネックレス、指輪……。本来ツリーに飾るはずのない品々が、枝に吊り下げられていました。 俺が困惑しているのを察したのか、男性が静かに口を開きました。

「これ、生前に妻が身につけていたものや、使っていたものなんですよ」

一瞬、言葉の意味が理解できず、間抜けな声が漏れました。すると男性は、まるですらすらと思い出を語るような口調で続けました。

「ここには元々、私たちの一軒家が建っていたんです。妻と仲良く暮らしていたんですが……私が会社をリストラされてから、すべてが狂いました。ギャンブルに溺れ、借金を重ね、妻以外の女性とも関係を持ってしまって。……彼女、クリスマスイブに自殺したんです。ここで、首を吊って」

男性は淡々と語ります。 「その時、私は競馬と不倫相手にうつつを抜かした帰りで、ただ呆然と立ち尽くしていました。その後は後悔する毎日ですよ。失ってから気づくなんて、滑稽ですよね」

彼は少し笑いました。

「首を吊っていた彼女の顔は、いつも私に見せていた顔とはかけ離れていて、苦しみの表情で今でも忘れられなくて、私を憎んでいるのか時折、夢にもでてくるんです。だから少しでも、笑顔だった頃の彼女に戻したくて。だからこうして、彼女が輝いていた頃に愛用していたものを飾っているんです。そうすれば、彼女も笑ってくれるでしょう?」

俺は冬の寒さとは質の違う、刺すような寒気を覚え、逃げるようにその場を去りました。

翌日、その敷地を通ると、そこにはクリスマスツリーの影も形もなく、ただ「売地」と書かれた看板が寒空の下に立っているだけでした。

あの体験自体不可思議なのですが、俺が逃げる際に、風も吹いてないのにクリスマスツリーが大きく揺れたのは何故なんでしょうか?

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する