• 異世界ファンタジー

第二十二話について

主人公たちは魔法学校であるタルムーグ魔法学院の入学試験を受けるために、王都から学院年に向かいます。その途中で起こるトラブルが、今回の大きな出来事です。

さて二十一世紀の日本に生きる我々からすると、相手が侮辱的なことを言ったからといってその生命を奪おうとするのは、大変野蛮なことに見えるかも知れません。しかし、封建的な階級社会ではこういった侮蔑や嘲りは重大な意味を持っています。それは権威への挑戦であり、相手の持つ威信を傷つける行為だからです。

権威者は笑われることを大変嫌います。それは笑いの対象になることが如実に自身の持つ権威を損なうからです。これを放置しておいては誰も彼に対して畏まらなくなり、つまりは言うことを聞かなくなります。この辺は反社会的組織の人間にもよく見られる光景で、彼らの言う「舐められたら終わり」というのも、彼らの力の根源である「暴力への恐れ」が通用しなくなることから来ています。

これはより巨大な暴力装置である国家にも通じます。だからこそ外交においてはこまかなプロトコルが存在し、すべての国々は自国の格に見合った扱いを求め、そうでないと感じると声高に改善を要求します。プロトコルの無視は自国の威信を傷つけられる行為であり、それが続けば多国間の中で自国の地位が低下していくことになるでしょう。

話が逸れて行っていますが、法の支配が徹底していない社会では侮辱には即報復しないと、裁判所が後に名誉を回復させてくれるといったことは起きません。なのでサキ達は即座に、無礼を働いた伝令を処断しようとしたのです。昔の生活って大変だったんですね。

これを逆手に取って、昔の王宮では誰にでも無礼を働くことを許された宮廷道化師のような存在が認められていました。彼は王様ですら笑い飛ばす事が出来ますが、同時に自らも嘲笑の対象となっています。まともに取り合われない代わりに、それで罰せられることもありませんでした。

しかしながら宮廷道化師は王や廷臣達を馬鹿にしながら、同時に彼らの誤りを指摘したり、彼らが気づいていないことをほのめかしたりすることもあったのです。偉い人たちは他者から「間違っている」と言われても容易にそれを受け入れられません。自分の威信が傷つくからです。しかし道化の嘲笑と共に行われる指摘なら、威信の低下を気にせずにそれをこっそり受け入れることが出来るのでした。

宮廷道化師は王宮の賑やかしに一役買っているだけでなく、誰も言い出せない苦言や忠言を嘲笑に乗せて届けるという、大変重要な役目を持っていた存在だったのです。勿論、全ての道化がこうだったわけではありませんが、何故あのような存在が王宮にいることを許されていたのかということを理解する一助にはなるのではないでしょうか。

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