私は小説が好きです。
月に数冊の本を読む中で美しい表現だな、綺麗な行間だな、あたたかいストーリーだなとにこにこしながらページを捲る日々でした。
社会人になって数年が経ち、地方から東京に引っ越しました。東京の質量に圧倒されながらも日々の生活を慌ただしく送っていました。自分自身で選んことではあるのですが、いわゆる激務と呼ばれる働き方をしています。
とにかく拘束時間が長いです。帰宅して食事シャワーを済ませ数時間の仮眠をしたらすぐに次の仕事に向かう働き方をしていました。
人って余裕がなくなっていくとやりたかったことがどんどん後回しになっていくんですね。
東京に来て1年が経つ頃には小説が読めなくなりました。本を開く気力もなく今度は読めるかもと買ってきても本棚に積んでしまう。たまに本を手に取っても目が滑って内容が頭に入ってこないんです。ぶつ切りの時間の中で物語に浸かることができません。
あんなに小説が好きだったのに。
そんなことが続いていたとき、知人から鈴木晴香先生と木下龍也先生の共著である「荻窪メリーゴーランド」を勧められました。濃いピンクの表紙にメタリックな赤い文字で視界をジャックしてくる1冊。
2人の歌人が交互にストーリーを編んでいくそれは短歌集としては珍しい形式のものだったことは後から知りました。
その1冊から短歌の世界に足を踏み入れました。今でもたった31文字の中に想像もつかないような広い世界が、表現があることに驚かされ、そして救われています。
はじめまして。
重本累(しげもとかさね)と申します。
不眠症です。短歌が好きです。
よろしくお願いします。