作品タイトル 【AとBの私】
「おかーさんお菓子買って〜」
「もうしょうがないわね〜」
スーパーのお菓子売り場で母にお菓子を催促しているのは8歳の時の私。
同じ場所、同じ時間のスーパーマーケット。
私がいる通路を一つ挟んだ隣の通路では母の代わりにカートを引き、夕食の献立のメニューを話し合っている。
「お母さん、今日何にするの?」
「そうねぇ……何食べたい?」
「私はハンバーグ!」
「それじゃそうしましょうか」
「やったー!」
私と同じ姿格好をしたその親子とすれ違った事にはどちらも気が付かない。
「お母さーん、今日のご飯なに〜?」
「野菜炒めよ」
「え〜! 私ハンバーグがいい」
「それならスーパーで聞いた時に言ってくれればいいのに。 あと、ご飯前にお菓子食べ過ぎちゃダメよ」
「は〜い……」
「宿題も忘れずにやりなさいよ」
「わかってるよ〜」
あ〜あ、動画観たいな……。
家に戻るなり母に言われてしまう。
勉強は頭に入らず観たい動画をスマホで漁り始めた……。
「お母さん、玉ねぎが目に染みる〜」
「あらあら、玉ねぎは切る前に軽くレンジで温めると目に染みにくいのよ。 1時間前に冷蔵庫で冷やしておくのもいいわね」
「へ〜」
「お父さんが帰って来る前に作っちゃいましょうね」
「お父さん喜んでくれるかな?」
「もちろん喜んでくれるわよ」
ハンバーグのタネを一生懸命コネている私。
お父さんが帰って来ると私がハート型に作ったハンバーグを自慢する。
夕食も終わり、宿題を終わらせてお風呂に入り寝る時間まで家族でテレビを観て就寝……。
「早く起きなさい! 遅刻しちゃうわよ」
「う〜ん……まだ眠い……」
「早く起きなさい!」
「ふぁ〜……」
歯を磨く時間だけで急いで家を出る。
チャイムギリギリで学校に登校して眠い目を擦って頭に入らない授業をこなす……。
下校時には眠気もなくなり元気になるので、遊びに行く。
「起きなさーい」
「ふぁ〜……おはよう」
眠い目を擦って顔を洗って歯を磨く。
朝食を食べて友達と学校へ行く。
授業も終わって家に帰り今日は宿題を早く終わらせてお母さんとおつかいに出かける。
どちらも私。
変わらない私。
それでも向かう未来は違うのかも知れないし、どこかで交わるのかも知れない。
どちらが幸せなのかも私次第。
AとBの私。
CもDもE、F、G……。
他にも沢山の私の未来。
今の私はどの私なんだろう?
考えたってわからない……ううん、わかってる。
だって私は私だもの。
他の誰でもない。
沢山の私の中の私。
明日の私はどの私? きっと素晴らしい私。
だから今日も素晴らしい私でいよう。