「善とは? 悪とは?」という本作の根幹にあるテーマから、軍記物としての重厚な世界観、さらには登場人物たちの複雑な心理描写に至るまで、これほど深く読み解いていただけたことに、作者として感無量です。
おっしゃる通り、本作には「絶対的な善」や「絶対的な悪」は存在しません。それぞれが信じる正義や事情、そして逃れられない運命を背負いながら、政治・経済・軍事という大きな時代のうねりの中で、いかに選択し、生きていくのか――。そうした人々の姿を、サーティーンという特異な存在の視点から描くことに、私はこだわり続けてきました。
また、「大河ドラマのよう」という、この上ないお言葉まで頂戴し、作品世界を存分に楽しんでいただけていることが伝わり、本当に執筆の励みになっています。
改めまして、心のこもった素敵なレビューをありがとうございました!
掬月さんの代表作品『少女の眠る海』をご紹介します。
「人間は、どこまで行っても、人間の可能性の範囲内である」
そんな哲学的な一文から始まる本作は、静かながらも深い余韻を残す人間ドラマです。
八歳の誕生日を迎えた主人公・エレンは、雑貨商を営む誠実な父と、人懐っこく優しい母に「欲しいものはない」と告げます。彼女が願ったのは、日々鍛錬を重ねてきたヴァイオリンの演奏会を開くことでした。
しかし、その願いは単なる趣味の発表ではありません。演奏会で集まったお金を教会へ献金し、公学校の同級生をはじめ、生活に困っている人々の助けになりたい――。幼いながらも聡明で純粋なエレンの想いに、父は現実的な視点から諭し、母は優しく寄り添います。家族の温かなやり取りも、本作の大きな魅力の一つです。
やがて教会の司祭長にその才能を認められ、日曜日のミサで演奏することが決定。そして演奏会を終えたその日、宝石商である伯母の来訪をきっかけに、エレンの運命は大きく動き始めます。
静謐な空気感と繊細な心理描写で紡がれる、重厚で美しい物語です。ぜひご一読ください。
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