☆ 生後二ヶ月
「ぁ〜〜〜」
「さあ、お風呂の時間だよ、リュカ」
「ルイさん、タオルと着替えも準備できましたよ」
夕食を食べた後は、リュカくつろぎの沐浴タイムだ。
この時間はエミリーさんも夜の子守りに備えて起きているので、二人掛かりで入れる。
子ども部屋に大きなたらいと桶を用意し、両方に水生成(ウォーター)と発熱(ヒート)でお湯を張ったら準備は完了。本当に、生活魔法さまさまだ。
リュカをすっぽんぽんに剥き、そうっと足からお湯に入れる。
「えっと、左手で首と頭をしっかり支えて、と……」
「そうです。お上手ですよ」
ぼくは今日、はじめて自分の手でリュカをお風呂に入れるのだ。
エミリーさんの手順をしっかり見て予習していたとはいえ、緊張する。リュカの重みで、ぼくの左手は微かにぷるぷるしていた。
当のリュカはお腹までお湯に浸かって、すっかりリラックスモードだ。気持ちよさそうに「ふわぁ〜」とあくびをして、目もとろ〜んとしている。
小さな体が冷えないように、リュカの前面にタオルを掛けて、右手でお湯をかけてあげた。
「気持ちいいねえ〜、リュカ〜」
「あぅ〜」
ふやぁとふやけたように笑うリュカの顔を、ぼくは濡れたタオルで優しく拭う。顔はいやなのか、リュカは少しだけ首を左右に動かした。
その首やあごのしわに、ミルクの吐き戻しが残っていることがあるので、忘れずに手で洗う。
その次は、まだうっすらとしか生えていない髪だ。前から後ろへと撫でるように洗い、耳の後ろも特に匂いやすいのでしっかりと。
「ぉぁ〜〜〜」
「ぷっ。リュカ、なにそのお口〜!」
「ふふ。よっぽど、気持ちがいいんでしょうね」
リュカは「おっほーぉぉぉ」とでも言うかのように、口をツンとすぼめてすごい顔だ。
ぼくは思わず笑って、つい「ここか?ここがええんか?」とサービスしてしまった。
エミリーさんと二人でひとしきり笑ったら、お湯が冷めないうちにお腹・手足・お股の順にやさしく手洗い。
そうしたら、リュカをつるんと落とさないように注意しつつ、後ろに返す。手早く背中とお尻を洗ったら、すぐに正面に戻した。
「よ〜し、リュカ、気持ちよかったね〜。お風呂あがろうね」
「ぁ〜〜〜」
ぼくが両手でリュカの頭とお尻を持ち上げたら、エミリーさんが桶に貯めておいた上がり湯を掛けてくれて、沐浴は終わりだ。
乾いたタオルにリュカを包んでしっかりと水気を拭くと、治療院で買った保湿剤を全身に塗る。実は、これが一番楽しい。
「つるつる、ぴかぴか、てかてか、だね〜」
ばんざ〜いしながら、リュカもにっこにこのご機嫌だ。
湯上がりたまご肌はどこもかしこも、むちむちのすべすべで、できることならずっと触っていたい。
ぼくはそんな邪な気持ちをグッと堪えて、お日さまの匂いがする肌着をリュカに着せた。
「はい、終わり〜」
リュカのお腹をぽんぽんすると、「ぅあ〜」と声を上げた。
兄ばかかもしれないけれど、まるでリュカが「ありがと〜」とでも言っているかのようだ。
ぼくはうれしくなって、そのお餅のようなほっぺをつんつんと触りながら、「どういたしまして」とつぶやいた。
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4月分のサポーター様限定公開の特別SSでした。
沐浴は現代では一ヶ月目までで、二ヶ月目以降は普通にお風呂でOKです。ですが、今世はお風呂がないので、月齢に関わらず赤ちゃんは部屋で沐浴をする、という設定で書いています。