PVが伸びず続編を書く予定はなくなったため、今回からは未公開の構想を交えてお話しします。今回のテーマは「主人公」です。
本作の視点上の主人公はアサルですが、物語全体の主人公はコルバンと言えます。実質的なW主人公制です。
①秩序と混沌の逆転現象
創作裏話④でお話しした通り、本作は「秩序(マルドゥク)と混沌(ティアマト)」の反復する対立が基本構図です。
アサルは秩序の神マルドゥクの別名を冠し、職業も捜査官であるため、明確な「秩序側」です。一方、コルバンは裏社会の人間であり、社会制度上は「混沌側」に属します。
しかし、コルバンの実態は『秘密結社ヤタ』の捜査官に相当します。彼の使命は「法の外側から秩序を破壊する者を見つけ出すこと」であり、そのために裏社会の情報屋を装っています。つまり、彼もまた事実上の「秩序側」なのです。
対して、「魔力衰退に伴う社会不安の解消」と「強固な法秩序の確立」を掲げる副大統領アーサー・ヴァン・スタントンが組織した「レヴィアタン」は、個人の自立や犠牲を省みない急進的な改革を推し進めています。本作では、本来は秩序であるはずの政府側を「混沌勢力」として描きました。
このように、「秩序と混沌の逆転現象」を主軸にしたストーリーを展開する予定でした。
②対照的な二人の精神性と魔術
アサルは地に足の着いた秩序側の人間ですが、作中で描いた通り、単なる石頭ではありません。シモンやウロボロスの構成員といった小悪党を「社会の悪い循環の中にいる存在」として憐れむ視点を持っています(本編ではカットしましたが、彼の亡き父も裏社会の人間の更生に尽力していたという設定があります)。秩序と社会の実態、そのバランスを取れるタイプです。
その精神性は極めて内向的であり、それは感受を強化する【分析】や、心身を強化する【加速】といった魔術の系統にも反映されています。
逆にコルバンは、生まれも育ちも裏社会です。好き好んで裏社会に生きていたわけではありませんが、適性が高く苦労しなかったため、広い視座を持つことができました。裏社会の異端児たち(ヤタのトップや、クラウンズのルイなど)と関わり、想像だにしない世界観や思想に触れることで、自らの熱意の向け先を見出しました。
劣悪な環境に汚染されない「純粋さ」や「誠実さ」が彼の精神の核であり、それは心身を強化する【加速】と、炭素結晶を抽出・操作する【黒衣】という魔術に表れています。
③余談:コルバンのモデルについて
お気づきの方もいるかもしれませんが、コルバンのモデルは実在のストリーマーの方です。
恐ろしいことに、モデルとなったご本人の方が、創作上のキャラクターよりもずっと卓越しています。執筆当時(2026年8月)も、並外れた情報収集能力と分析力で視聴者を沸かせていました。
「事実は小説よりも奇なり」という言葉には人生でたびたび出会いますが、世の中は本当に面白いですよね。