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年末年始に読んで欲しい! 今年ささったカクヨム推し小説!(4)『電車の呼び声』 by 二ノ前はじめ さん


年末年始こたつで読むのをオススメしたい、今年ささった推し小説最終回です。本当はもうあと何本かご紹介したかったのですが、年末になってしまいましたので、これにて打ち止めとしたいと思います。



さて最終回は、二ノ前はじめ さんのこちらの作品です ↓

電車の呼び声
https://kakuyomu.jp/works/822139840882084691


二ノ前さんはホラー小説を書かれています。ホラーといっても怖くないし、気持ち悪くもありません。むしろ、美しい。読んでいると、深夜の水族館で一人不思議な形の魚やクラゲを見ているような、そんな気持ちになります。

二ノ前さんは短編を多く書かれます。情景を作り出し、不可思議なものに目を留め、徐々に近づいていき、それが人ならざるものだと気付かされ、最後の一言にはっとする……という離れ業を、短いと1,000文字前後で書ききります。読んでいると「いや、これどんな神業よ!?」と、崇拝と嫉妬が混じった気持ちになります。例: 『蔵の中』(https://kakuyomu.jp/works/16818093079211650491)。

特に、最初の情景設定で本当にするするっと話に引き込まれて、客観的に文章を分析する余裕もないくらいです。二ノ前さんの文章を何話か本気で書き写してみたら、何か体得できるかもしれませんね。やってみよう。

そんな二ノ前さんの小説なのですが、登場人物たちも割と情景の一部のようなんですね。主人公が居て、その主人公の喜怒哀楽のドラマを追っていくというよりは、舞踏を見ているような感じで、登場人物も不可思議なものたちとゆらゆらと一緒に流れていく傍観者のような印象を受けます。

そんな中で、『訪う影』(https://kakuyomu.jp/works/822139839023181153/episodes/822139839024582857)は少し毛色が違うなと思ったのです。この話には、毎夜訪れる化けた女狐と、その女狐の様子を狸寝入りで(狐だけに……)伺う男が出てきます。この二人は、明らかに互いに興味を持っている点がそれまでの登場人物と違うなと感じました。それまでの登場人物は、巻き込む側と巻き込まれる側で力関係はあるけれど、お互いについて自主的な感情があまりありませんでした。しかし、『訪う影』では自主的な感情が語られていて、ほぼ初めてと言っていい(かと思うんですが)、相手との距離を測る双方向のコミュニケーションが発生している!と新発見をしたのでした。

そして、オススメとなります『電車の呼び声』です(えっ、ここまでが前フリ? 長過ぎない?)。

この話の主人公は、人がいつの間にか化物に変わってしまう世界で、一人で生き延びている高校生の夕子です。夕子はある日、中学のときに同級だった栞に話しかけられ、徐々にぎこちない友情を築いていきます。栞には回りの人たちは怪物には見えず、普通の人間に見えます。そのため、二人の間には理解し合えない溝が残ります。そんな中で夕子は、この町から出ていくと怪物になって帰って来るという法則を発見します。そして栞が陸上部の県大会で外へ行くことになり——。戻ってきた栞を見る勇気はなかった夕子ですが、最後に自分一人がこの世界の異常さを認識できるには何か理由があるのだと考え、世界を救うためにこの町を出る決心をします。

うおおお! ドラマ キターーーー! 私は一人で感動してしまいました。主人公が誰かのために決心をして行動を起こす! これは今まで無かった展開! 『星の王子さま』を読んでたと思ったら、『東京リベンジャーズ』だった!みたいな感動です!(?) これがいつもどおりの二ノ前さんの淡々としてゆうらりとした文体で書かれるから、夕子と栞のぎくしゃくとした近づき方と友情の芽生えが自然に感じるし、夕子の最後の決心も余計に引き立ちます。この感動を皆さんにもぜひ感じていただきたい(熱弁)! そして全編にわたって夕子がその時々で聞いている宇多田ヒカルの BGM が良いです。夕子が旅立ちのときに聞いているのが『蹴っ飛ばせ』なのもすごく合っています。

というわけで、できれば二ノ前さんの短編をまず幾つか読んでから、『電車の呼び声』を読んでほしいなと思います。その次の『瞳の夢』(https://kakuyomu.jp/works/822139841752977111)もすごいです。顎外れます。

2件のコメント

  • イカワ ミヒロ様、ご紹介に賜り光栄です。

    年末のお忙しい中、拙作を詳細に語ってくださり頭が下がる思いです。
    ほとんどの掌編短編は語り手の視点を通じて、現象を観測していく感覚に近いです。語り手の素性はおろか、性別さえ曖昧なことも多いかと思います。

    『訪う影』は自分なりに滑稽話を目指してみたものです。おかげで狐の女性が天然の入った性格になりました。
    『電車の呼び声』は短編としては長く、なかなか投稿する機会が見つけられずにいました。終末的な世界観を構築して、その中で起こる法則性を考えるのは楽しかったです。

    『瞳の夢』など、他の作品と世界観を共有しているものが多いです。ネット小説で初期に投稿した、一本の掌編から始まっています。ここまで世界観を引き継ぐとは自分でも思っていませんでした。

    自作を語るのはなかなか気恥ずかしいものですね。
    ここまで自分の作品を評価してくださったイカワ様には、改めまして感謝の念を表します。本当にありがとうございました。

    今年一年、大変お世話になりました。また来年もどうかよろしくお願い申し上げます。
    良いお年を。
  • 二ノ前さん、
    こんなところからですが、あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。

    丁寧なコメントありがとうございました。

    > 語り手の視点を通じて、現象を観測していく感覚
    これ本当にそうですね! だからどの作品も静謐な感じがするんでしょうね。

    > 自作を語るのはなかなか気恥ずかしい
    ふふふふ、インタビューではじっくり語っていただきますよ!
    その節には、よろしくお願いいたします <(_ _)>
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