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なんにも覚えてない

 何をしても記憶に残っていないことがよくあります。
 例えば映画館でこの目で見て確かに感動した、面白かったはず。なのに感想を検索してみると自分がなんにも見ていなかったのだと思うような深い考察や解説が出て来て自分の感動したところや面白かったという体験がどんどんなくなっていくのです。
 そして最後にはなんにも覚えていない馬鹿だけが残ります。
 それは映画だけでなくほぼ全ての娯楽に当てはまります。
 極々パーソナルな(精々家族だけの)食事などの事象を除いてほとんどの分野に自分よりずっと詳しい人がいて、観察眼に優れた人がいて、発想力のある人がいて。熱狂の中にいる自分はちゃんと波に乗れているでしょうか。
 他人の意見に流されているだけで、自分で昇華しているか怪しいことこの上ない。
 正直に言えば娯楽に疲れているのかもしれません。物を書くのにインプットするのも大事ですが人間は風船のようなものです。空気やガスを入れなければ浮きませんが詰め込み過ぎても割れるのです。
 なんにも覚えていないような日常に立ち返って息を吸い直すのもいいでしょう。
 暑かったり寒かったりですが猫はまだ一緒に寝てくれますか。いつものパン屋さんの新作はなんでしたか。夏服はもう出してしまったけれど冬服は仕舞えません。
 今日は杏の青い実が大きくなってきました。

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