11話まで読んでくださった方向けの話になります。(ネタバレあり)
陽葵は、なぜ5年間も声を失っていたのか?
奏多に助けられ、針山地獄で共に過ごすことになった陽葵。
しかし彼女は、5年もの間一言も喋ることができませんでした。
陽葵の過去編もご覧いただいた方なら、彼女がどれほど深い心の傷を負っていたか、
そしてそのまま針山地獄に落とされたことの意味も、想像できるかもしれません。
針山地獄では、無数の針を踏みながら歩くことで魂が傷ついていきます。
ですが陽葵は、奏多に“背負われたまま”歩き続けていたため、
身体(魂)は徐々に回復していきました。
けれど――
心の痛みは、そう簡単には癒えません。
この世界では、魂の再生はあっても、心の再生には時間が必要です。
特に、陽葵のように「生きることを諦めてしまった魂」は、
ほんの少しの温もりすらも、恐ろしく感じてしまうのです。
だから彼女は、喋れなかった。
言葉にできない痛みと共に、ただ俯き、ただ震えていた――
それが、あの5年間でした。
やがて、奏多との時間が、陽葵の心に少しずつ変化をもたらしていきます。
その過程こそが、物語の“希望”の始まりだったのかもしれません。
この物語は、心を閉ざしていた彼女が、もう一度“誰かを信じる”物語でもあります。