昨日の午前10時頃のことです。
「あっ」と思う間もなく、頭から歩道に落ちていました。いや、ぶつかっていました。
駅前の横断歩道を渡り切ろうとした時でした。突然、衝撃が襲ってきたのです。
何が起こったのかわかりませんでした。つまずいた感触も後ろから押されたという感触もありません。本当に突然、顔と歩道が衝突したのです。
「大丈夫ですか?」
女の人の声が聞こえました。
「救急車呼びますね」
同じ声が続きました。
倒れたまま動けない私は左目の上を手袋をはめた右手で押さえていました。そこが痛いのです。
訳もわからず混乱した状態でいると、顔から何かが勢いよく出ていることに気づきました。
血でした。
息を吐くたびに鼻からジャーという感じで血が飛び出していました。路面はたちまち血の海になりました。
脳内出血?
恐ろしい言葉が頭に浮かんできました。
開頭手術?
目の前が真っ暗になりました。
そのまま動けないでいると、サイレンの音が聞こえてきました。
「救急車が来ました」
女性の声が聞こえたと思ったら、すぐに「大丈夫ですか?」という男性の声が聞こえてきました。そして、色々なことを訊かれましたが、余りよく覚えていません。
その後は担架に乗せられ、救急車で病院まで運ばれました。
「意識はあります。バイタルサインは正常です」
病院に電話している声が聞こえました。
私はガチガチと震えていました。担架に乗せられる時に上着と靴を脱がされたからです。でも、それ以上に不安が震えを誘発しているように思えました。
ほどなくして病院に着きました。車椅子に移され、脳外科の外来へ運ばれました。
でも、担当医が別の処置で不在のため、形成外科へ連れて行かれました。左目の上を切っていて出血していたからです。
すぐに診察が始まりました。担当医は30代と思われる優しい表情をした男性でした。
問診のあと、脳内出血の有無を調べるためにCT検査をすることになりました。すぐに検査室へ連れて行かれました。
検査が終わると、また形成外科へ連れて行かれました。
CT画像を見ながら医師の説明が始まりました。
「左目の上を強く打ったようなので裂傷になっていますが、骨に異常はありません。ただ、縫合が必要だと思われます」
「鼻の左側の骨は異常がありませんが、右側が2か所剥離しています。出血はここからのようです。でも、手術する必要はないと思います。3週間ほどでくっつくと思います」
「そして、脳は……」
と言いながら、画像をスクロールしていきました。
「出血はないようです」
「良かった~!」
思わず声を出してしまいました。
医師は笑みで応えてくれましたが、「最終判断は脳外科で聞いてください」と告げられました。
それから、外来のベッドで縫合の処置が始まりました。左目の上を消毒した上で麻酔を何箇所か打たれました。
間を置かず縫合が始まりました。痛くありませんでした。それを伝えると、「よかった~」と看護師さんの温かい声が聞こえてきました。心配してくれていたんだな、と思うとジーンとしました。
抜糸のことを訊こうとすると、先んじて医師から説明がありました。
「この糸は自然に分解されて体内に吸収されるので抜糸という行為はありません」
それを聞いて、先端技術って凄いな、と思いました。
その後、脳外科に連れて行かれました。
少し待って外来に入ると、40代くらいでしょうか、にこやかな笑みを浮かべる温厚そうな男性医師が迎えてくれました。
問診後、CT画像の説明がありました。
「脳内出血は現在のところ認められません」
はっきり言われました。しかし、「時間の経過とともに変化する場合があるので、このような症状が出れば、すぐに連絡ください」と言って、一枚の紙を渡されました。頭痛や嘔吐、吐き気など、気をつける症状が書かれていました。そして、今日の注意点を告げられました。
・特にこれから6時間は安静にすること、
・出血を助長することがあるので刺激物や味の濃いものは食べないこと、
・風呂には入らないこと(体を拭く分には問題ない)、
・お酒は飲まないこと、
そして、「お大事に」と言われて笑みを送ってくれました。
「ありがとうございました」
頭を下げて外来を辞しました。
急いで駆けつけてくれた家族と共にタクシーに乗り込みましたが、頭は感謝の気持ちでいっぱいになっていました。
・救急車を呼んでくれた若い女性
・すぐに駆けつけてくれて、適切な対応をしてくれた救急隊員
・的確な診断と処置をしてくれた二人の救急担当医と検査医
・心を寄せてくれた看護師
それから、
・私の頭を守ってくれた守護神やご先祖様
・丈夫な体に産んでくれた母親
・急いで駆けつけてくれた家族
などなど、すべてのパワー、すべての人、すべてのことに対する感謝の気持ちが溢れてきました。
深謝。
心の中で手を合わせながら、この命を助けてくれたすべての存在にもう一度頭を下げました。