【タイトル】
【解説】恋愛記号の彼女と、404の彼 (場面別・記号の意味)
【本文】
※ネタバレを含みます。本編を読んだあとにどうぞ。
※この解説は、作者の意図を整理したものです。
作品は、読んでくださった方の手に渡った時点から、読者のものだと思っています。
ここに書いた意味と違う受け取り方をされても、それも一つの読みです。
作者の意図を超える想像を広げてくださると、なお嬉しいです。
本編の登場順に、「この場面で記号がどんな気持ちを運んでいたか」をまとめました。
■ 冒頭
“23yixpueW”
→ 意味は「不安にさせないで」。
会話の前の、彼女の心の声です。「イヤになる」ほどの不安を、記号に包んで、頭の中で変換しています。
記号の意味が分からなくても、感情は先に伝わるように置きました。
■ 1 関係の確認
「ねえ、私たち、いつまで tYK. のまま?」
→ tYK.=カップル。
「恋人なの?そうじゃないの?」と言い切る代わりに、記号で包んで聞いています。重く聞こえないようにする、彼女なりの気づかいです。
■ 2 結婚の話
『結婚はまだ202』
→ 202=受け取ったが、すぐには実行されない状態。
彼にとって結婚は、「話は受け取った。でも、まだ処理しない」ものです。断ってはいないけれど、進める気配もありません。
「またそれ。受け取るだけで、先に進まないやつ」
→ 彼女が、202の意味を日本語に翻訳して返しています。彼の言葉の意味を、ちゃんと知っている人の返し方です。
■ 3 拒否ではない、という言い訳
「でも304でもあるよね。ずっと変わらない」
→ 304=変化がない状態。
「拒否はしていない」と彼は言いますが、何も変わらないなら、彼女にとっては同じことです。彼女は、彼の側の言葉まで降りて、現状を伝えています。
■ 4 会えない日々
「3eqeって言っても仕事」
→ 3eqe=会いたい。
彼女が何度も送ったはずの、小さな願いです。記号なので、軽い響きのまま、でも本気で送られています。
「今のあなた、402だよ。誠意の未払い」
→ 402=支払いが必要な状態。
埋め合わせの約束が果たされない状態を、「未払い」にたとえています。責める言葉ではなく、彼の言葉で現状を示す、彼女なりの最後の歩み寄りです。
■ 5 甘い一言
『128√e980』
→ I Love You。
彼が、会話が重くなったところで送る記号です。気持ちを伝えるというより、空気をやわらげるために使われています。
「思わず笑いかけて、やめた」
→ 彼女は、一瞬うれしくなってしまいます。だからこそ、すぐに引き返します。この記号に、何度も救われてきて、何度も動かされなかった、という経緯を意識して書きました。
「そういう時だけ、それ使うのずるい」
→ 甘いのに、ずるい。本編の核になる感情です。
「200で来ないくせに、記号だけ恋人みたい」
→ 200=成功。
約束を果たしに来ること(成功の状態で現れること)をしないのに、愛の記号だけは届く。そのずれへの、彼女の怒りです。
■ 6 最後の問いかけ
「202じゃなくて、ちゃんと」
→ 冒頭で彼が使った202を、彼女が返しています。「受け取るだけ」ではなく、「実行して」という最後のお願いです。
■ 7 先延ばしの返事
『来月なら少し落ち着く』『その頃ちゃんと話そう』
→ 言葉は誠実に見えますが、中身は「保留」です。202と同じ状態が、別の言い方で続いています。
『gnQ』
→ 君だけ。
本来は強い言葉ですが、「ちゃんと話そう」の直後に置かれると、問題を先送りにしたまま、甘い記号でまとめようとしているように見えます。
■ 8 彼女の最後の記号
「↔32434」
→ 32434=好きでした。両側の矢印を付けた、本作での造語です。
意味は、「好きでした。だから、ここで終わりにする」。
彼女は「別れましょう」とは言いません。過去形の「好きでした」と、閉じる記号で、静かにお別れを伝えています。
『また拗ねてる?』
→ 彼は、その意味を受け取れていません。受け取らなかった、というほうが近いかもしれません。
『128√e980』
→ 二度目の「I Love You」。一度目と、同じ記号です。けれど、彼女にはもう、届いていません。
■ 9 彼女の側の変化
「その夜、彼女は返信をしなかった。翌朝、届いていた別のメッセージにだけ、『ぜひ』と返した。」
→ 彼女は、彼を待つことをやめて、前に進み始めています。「ぜひ」は、誰かからのお誘いへの返事です。相手の詳細を書かないのは、彼女の物語が、彼の知らないところで続いていることを示したかったからです。
■ 10 三日後
「彼女の『831』」
→ 831=I Love You。
以前は、週に何度も届いていた記号です。彼女から届かなくなっていたことに、彼は気づいていませんでした。タイトルの回収にもなっています。
「過去形で、しかも、閉じるための記号だった」
→ 彼は、↔32434の意味に、ちゃんとたどり着いています。「理解できない人」ではありません。あとから確かめて、ようやく分かる人でした。
■ 11 スタンプ
「相手はこのアイテムを持っているためプレゼントできません」
→ 持っているから贈れない場合も、ブロックされて贈れない場合も、同じ表示になります。だから彼は、結果を決めつけずにいられます。
(202でも304でもない。処理の保留でも、変化なしでもない。繋がらない――404)
→ 404=見つからない状態。本作では、「気づいた時にはもう遅い」という意味でも使っています。
彼が使ってきた202や304のように、「保留する」ことも「変化なしにする」こともできない状態です。
■ まとめ
同じ意味を知っていても、どの言葉で愛するかは違いました。
彼女は、彼の言葉まで降りて、何度も話しかけました。
彼は、彼女の言葉の意味を知りながら、使い方を最後まで間違えたのだと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
皆さんが受け取った温度が、それぞれの正解です。