『おなじみのなぞなぞだよ
虎か?それともご婦人か?
君の前にはドアが三つ
左のドアにはこう書いてある。「右の部屋には虎がいる」
真ん中のドアはこう書いてある。「虎はこの部屋にいる」
右のドアはこう書いてある。「ご婦人はこの部屋のなか。空いてる部屋はありません」
ホントのことを書いた部屋は一つだけ。
さあ、ご婦人はどこ?』
※Wizardry ワードナの逆襲より引用
一見すると単純な論理問題のようだが、実態はその皮を被った不確定問題である。
1左のドアを真実と仮定する。
“右の部屋には虎がいる”
真ん中のドアの記述も当然嘘となり、真ん中に“虎はいない”
右のドアの記述も当然嘘となり、“この部屋に婦人はおらず、また空いている部屋がある”
そして消去法で右のドアの先に“虎がいる”
一方で左のドアと真ん中のドアのいずれかに“婦人がいるか、空き部屋になっている”
つまり、論理上“特定はできない”
2 真ん中のドアを真実と仮定する
“この部屋に虎がいる”
左のドアの記述は当然嘘となり、“右の部屋に虎はいない”
右のドアの記述も当然嘘となり、“婦人はこの部屋にはおらず、空き部屋はある”
また、左のドアの虚偽から右のドアの先は“空き部屋”となっている。
つまり、左のドアに“婦人がいる”
3 右のドアを真実と仮定する
“ご婦人は部屋の中。空いている部屋はない”
右のドアの記述は当然嘘となり、“右の部屋に虎はいない”
真ん中のドアも当然嘘となり、“この部屋に虎はいない”
空いている部屋がないとのことなので、左の部屋には虎か婦人のどちらか、真ん中の部屋には虎がいないとの事なので婦人がおり、そして右のドアの先にも婦人がいる
この事から、三つのドアから婦人の位置を“一意に決めることができない”
以上の三つの例からわかる通り、真ん中の場合を除き、婦人の位置を絞り切ることのできない問題となっている。この事から論理問題の皮を被った不確定問題であり、AIがもし他の場合も推論するのなら、“どの部屋にも婦人がいる”と答えることになるだろう。なぜなら、右のドアを真実と仮定してしまえば、そのように解釈可能となるからである。
実際の答えは左のドアのようである。
“ホントのことを書いたドアは一つだけ”
この記述から、これはホントのことを書いたドアを選ぶ問題であり、その先に婦人がいると暗に示しているとして、解釈することもできる。
左のドアを真実と仮定した場合の最終盤面は、左のドアか真ん中のドアのいずれかに婦人がいるか、空き部屋になっているかの“二者択一”となる。つまり、“真実のドアを選ぶ”ことを主題に置換した場合、必然的に左のドアを選ぶ以外の選択肢は“消える”。
一方で右のドアを真実と仮定した場合にも同じ事が言えるが、この場合、“空いている部屋がない”が曲者となり、真ん中のドアには“虎がいない”事から“婦人がいて”、また右のドアにも“婦人がいる”。つまり、“真実のドアを選んだ”としても、“婦人のいる”部屋は“一つ”に決まらない、“消せない”。
つまり、この問題の本質は、消去的な選択法を用いて「尤もらしい推測」を導き出すこと。それゆえに、不確定問題と見做せるだろう。