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エピソード0:魔王の流転
胸を貫く、絶対的な死の予感。
勇者の放った神速の一撃は、間違いなく我の核(心臓)を粉砕していた。
「……見事だ、勇者よ」
崩れ落ちる魔王城の中、我は薄れゆく意識で彼を称賛し、同時に己の魂のすべてを術式へと叩き込んだ。
魔族を統べる者として、強欲な人間どもにこの命をくれてやるわけにはいかない。
砕け散る寸前の魔力をかき集め、空間を強制的に引き裂く。向かう先は、人間も魔族も寄り付かぬ絶対の死地――辺境の森『深域』。
空間転移の激痛に耐え、泥濘のような腐葉土の上に転がり落ちた瞬間、我は絶句した。
「がっ……、はぁっ……!」
肺が焼け焦げるような激痛。深域に漂う濃密な瘴気は、手負いの我にとって猛毒に等しかった。このままでは、魂ごと瘴気に溶かされて消滅してしまう。
「ええい、忌々しい……っ!」
我は残された僅かな魔力を、肉体の『再構築』と『環境適応』に全振りする決断を下した。
無敵を誇った成体の肉体が、ひどいノイズと共に縮んでいく。
魔力を極限まで抑えた省エネ形態――すなわち、幼い少女の姿へと退行していくのだ。
魔王としての威厳も力も削ぎ落とされ、豪奢なカクテルドレスだけがブカブカに残る。
「……屈辱の極みだな」
小さくなった両手を見つめ、自嘲の笑みがこぼれる。だが、感傷に浸る暇はなかった。
グルルルルルッ……。
血の匂いを嗅ぎつけたのか、茂みの奥から深域特有の異形にねじ曲がった魔獣たちが姿を現したのだ。
全盛期の我であれば、指先一つで消し炭にできる下等生物。だが今の我には、魔法を放つ魔力すら残されていない。
「チッ……退け! 雑種ども!」
我は威嚇するように叫ぶが、幼い少女の舌足らずな声では何の威厳もない。
飛びかかってくる魔獣の牙を間一髪で躱し、我はブカブカのドレスの裾を握りしめて、鬱蒼とした森の奥へと走り出した。
枝に頬を打たれ、木の根につまずき、泥水の中に派手に転びながらも、必死に走る。
かつて世界を震え上がらせた魔王が、顔を泥だらけにして、下等な魔獣から逃げ惑っているのだ。あまりの滑稽さに涙が出そうになる。
だが、絶対に死ぬわけにはいかない。
我は魔王だ。あの勇者の執念深い一撃を耐え抜き、魂を繋いだのだ。こんな名もなき森の泥濘で、無様に食い殺されてたまるか。
肺から血の味がしても、足がちぎれそうになっても、我は走り続けた。
どれほど逃げ惑っただろうか。
魔獣の咆哮が遠のき、限界を迎えた足がもつれて倒れ込んだ先。
淀んだ月明かりの下に、ツル草に覆われた古びた小さな『小屋』が見えた。
「……ははっ、酷い有様だ……」
隙間だらけの壁に、腐りかけた屋根。だが、今の我にとっては城にも等しい玉座だ。
這うようにして小屋の中に転がり込み、部屋の隅にあったカビ臭い古い毛布にくるまる。
泥だらけになった銀髪を払いながら、我は震える息を吐き出した。
「……生きてやる。泥を啜ってでも、必ず」
翡翠の瞳に、決して消えぬ王の誇りを燃やしながら。
我は静かに目を閉じ、力を蓄えるための深い眠りについた。
――数日後、同じように泥を啜りながらこの小屋へ辿り着く、かつての宿敵(勇者)の存在など、知る由もなく。