何も打ち込まれていない真っ白なPCのテキスト画面。もうかれこれ30分はこの画面と睨めっこしている。
…いや、嘘だ。30分の内の20分は手元にあるスマホで数独を解きながら、PC画面は白いテキストページではなく、猫の動画が流れていた。
つまりは集中力が遠く彼方にお出かけしていたのだ。猫は可愛かった。
私は家で長時間の作業ができない。自宅にあるテーブルが低く姿勢が悪くなってしまうせいで集中力がなくなる前に腰と肩が限界を迎えてしまう。なので何かしらPCで作業するは専ら図書館かチェーンのカフェに移動する。
現在の自分の状況を考えると、家で大人しく作業をする方がいいのは分かっている。だがしかし集中できないものはできない。
100%集中ができないと分かっている自宅と、ある程度の集中が出来れば普段以上の実力が出せるカフェ。どちらを選べばいいかは一目瞭然だろう。
そう思い仕事の帰りに久しぶりに寄ったどこにでもある有名なチェーン店のカフェ。
その結果が冒頭の状況な訳だ。自分の意思の弱さと集中力の傾きにイライラする。
とりあえず気がむくままに文字を打ち込む。簡易的に生まれる私だけの世界。500文字ほど進めたところでコントロールとAキーで全選択をして、バックスペースキーを押した。
ここ数日、ずっとこの調子だ。
自分だけの世界を作り上げたい。1シーンだけを描くSSでも、誰かの世界のをのぞいて勝手にその世界の住人になった気になる二次創作でもない、正に「私だけの世界」
文章を書くのは嫌いじゃなかった。絵を描く才能はなかったから、私のオタク的活動は8割が活字と共にあった。
男性アイドルのような実際にいる人物でする妄想は楽しかった。彼らは彼ら自身が世界の主人公だったから。彼らが世間に見せない素顔の部分を想像するのは二次創作として許される気がした。
いつからか、アニメやドラマの二次創作が自分の手では創り出せないことに気づいた。今の趣味であるボイスドラマ作りをしていた頃から、特にその兆候は強くなった。
どうしてだろうと何日も考えた。そして一つの答えに辿りついた。
「私のモノじゃないからだ」
アニメ、漫画、小説、映画、ドラマ、舞台。
この世には沢山の人の手で作られた世界がある。私たちはその世界を覗き見、あるいは世界の住人になったつもりでその世界を堪能する。
けれどこの世界は自分のものではない。あくまで作者のものだ。無意識下でそれを感じていたんだろう。
私は自分の作ったボイスドラマの続きを勝手に想像されるのは好きじゃない。なんなら嫌いまである。私が作り上げた、一瞬しか光ってくれない大切な宝物たちを、自分が認めた人以外に踏み荒らされるのはとんでもなく不愉快だ。腹立たしい。
…けれど、もし自分だけの完璧な世界を作り上げることができたなら。
もしかしたら、自分の作り上げた世界に足を踏み入られることを嫌悪する気持ちにも変化があるかもしれない。