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ぎたきぬさん

  • @gita_kinu
  • 2025年4月9日に登録
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  • 11月4日

    私だけの世界

    何も打ち込まれていない真っ白なPCのテキスト画面。もうかれこれ30分はこの画面と睨めっこしている。 …いや、嘘だ。30分の内の20分は手元にあるスマホで数独を解きながら、PC画面は白いテキストページではなく、猫の動画が流れていた。 つまりは集中力が遠く彼方にお出かけしていたのだ。猫は可愛かった。 私は家で長時間の作業ができない。自宅にあるテーブルが低く姿勢が悪くなってしまうせいで集中力がなくなる前に腰と肩が限界を迎えてしまう。なので何かしらPCで作業するは専ら図書館かチェーンのカフェに移動する。 現在の自分の状況を考えると、家で大人しく作業をする方がいいのは分かっている。だがしかし集中できないものはできない。 100%集中ができないと分かっている自宅と、ある程度の集中が出来れば普段以上の実力が出せるカフェ。どちらを選べばいいかは一目瞭然だろう。 そう思い仕事の帰りに久しぶりに寄ったどこにでもある有名なチェーン店のカフェ。 その結果が冒頭の状況な訳だ。自分の意思の弱さと集中力の傾きにイライラする。 とりあえず気がむくままに文字を打ち込む。簡易的に生まれる私だけの世界。500文字ほど進めたところでコントロールとAキーで全選択をして、バックスペースキーを押した。 ここ数日、ずっとこの調子だ。 自分だけの世界を作り上げたい。1シーンだけを描くSSでも、誰かの世界のをのぞいて勝手にその世界の住人になった気になる二次創作でもない、正に「私だけの世界」 文章を書くのは嫌いじゃなかった。絵を描く才能はなかったから、私のオタク的活動は8割が活字と共にあった。 男性アイドルのような実際にいる人物でする妄想は楽しかった。彼らは彼ら自身が世界の主人公だったから。彼らが世間に見せない素顔の部分を想像するのは二次創作として許される気がした。 いつからか、アニメやドラマの二次創作が自分の手では創り出せないことに気づいた。今の趣味であるボイスドラマ作りをしていた頃から、特にその兆候は強くなった。 どうしてだろうと何日も考えた。そして一つの答えに辿りついた。 「私のモノじゃないからだ」 アニメ、漫画、小説、映画、ドラマ、舞台。 この世には沢山の人の手で作られた世界がある。私たちはその世界を覗き見、あるいは世界の住人になったつもりでその世界を堪能する。 けれどこの世界は自分のものではない。あくまで作者のものだ。無意識下でそれを感じていたんだろう。 私は自分の作ったボイスドラマの続きを勝手に想像されるのは好きじゃない。なんなら嫌いまである。私が作り上げた、一瞬しか光ってくれない大切な宝物たちを、自分が認めた人以外に踏み荒らされるのはとんでもなく不愉快だ。腹立たしい。 …けれど、もし自分だけの完璧な世界を作り上げることができたなら。 もしかしたら、自分の作り上げた世界に足を踏み入られることを嫌悪する気持ちにも変化があるかもしれない。
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  • 9月27日

    「彼と彼女と」との感想を送り付けたい。※ネタバレあり

    ※こちらは藤野悠人様の連載作品「彼と彼女と」の感想文です。盛大なネタバレを含みますので、ご注意ください。 はじめにご了承願いたいことがある。 私は普段台本師としてネットで活動しているが、元来文章を作るのは得意ではない。 ただ長年の読書と趣味程度に続けていた執筆と妄想力が運よくいい感じに噛み合った末、周りに恵まれ声劇という趣味を続けられているに過ぎない。 そんな私が今回ただの感想文を書こうとしている。締切直前の台本が書き上がっていないにも関わらず、だ。 それはなぜか。単純明快だ。心を大きく揺さぶられた作品に出会ったからである。もっと分かりやすく、口語体にするのであれば、 「くそ尊い作品見つけたからその良さを共有したい。なんなら同じように食らえばいい」 といったところだろうか。 私が大いに食らった(本来文章作品に対してこの言い方は決して正しいとは言えないが許してほしい。これ以外の伝え方は私の語彙力にないのだから)作品は藤野悠人作「彼と彼女と」という作品である。 本来はとあるアプリでのハロウイン企画の単発だったものをシリーズ化した連載作品らしい。 世間がハロウィンムードの中、同棲している2人のカップルの会話で物語は始まる。 OLである薫はどちらかというとしっかりとイベントごとを楽しむタイプ。フリーでイラストレーターやデザイナーをしている陽人はどちらかというとそういったイベントは苦手なタイプ。 薫が今までしてきた仮装の話や、そこから当時の彼氏の話をしていくと、意味ありげに「…へえ」という陽人。 個人的にはもうこの2人の会話から溢れる日常感がたまらなく尊い。 普段小説やアニメ、漫画などを見ているなら元恋人の話をしている時の相手の 「…」これ。この3点リーダーは確実に拗ねているかやきもちを妬いている王道だ。王道。大変結構じゃないか。大好きだよこのやろう。 ここからシンプルにヤキモチを妬いていることを相手に悟られてしまうのならそれでもよし。 リアルであればケンカの種になりかねないがここは二次元だ。それだけでも尊い展開である。 ところがこの作者は一筋縄ではいかなかった。 彼女である薫はこの陽人の反応に気づくことなく直前まで話していた「日本のハロウィンは苦手」という言葉、そして彼の超インドアな性格を受け入れ、ハロウィンを楽しむことは諦めるのだ。 ここにも個人的に理想が敷き詰められている。 恋人において2人で出かけること、所謂「デート」という行為には2人の価値観が大いに関係する。学生時代は仮装を楽しんだり夏祭りが雨で中止になったことを残念がるのを見ると、薫はどちらかというとアウトドアであることが推察できる。 そんな薫がインドアな陽人のためにハロウィンを楽しむことを諦める。こんな自然に互いを思いやれる。これは私が理想とする大人の恋愛そのものと言える。こんな余裕のある恋愛したい。誰か私に余裕をくれ。 だが陽人が見慣れない洋服や急におしゃれに目覚めたこと、そして夜に見てしまったスマホに出てきた女性の名前の通知とくれば、薫も不安にもなる。 ここまで読み進めているうちにとっくに私は薫に感情移入をしてしまっていたし、意図が読めない陽人の行動には寂しさと悲しみとちょっとした腹立たしさを感じる。 そんな日が数日続いた日に意味のわからないドッキリを仕掛けられたら、そりゃあ正当防衛でバッグでタコ殴りにもするだろう。自業自得だぞ陽人。 何故陽人がこんなことをしたのか。簡単な話が今まではこういうイベントをしてきたという話を薫から聞いたことによる「元彼へのヤキモチ」だったそうで。 お前ら1年半以上付き合ってるカップルだろ。今更すぎて薫にもそういう感情が陽人にあるなんて思わなかったらしく、大笑いしていた。 そしてここからが最大のてえてえ展開なのだが、陽人が言いたいことは一つで、薫もその言いたいことは恐らく理解している。 だがここが大人の厄介なところというか、もどかしいところというか。 年齢やら仕事やらコロナ(執筆当時は恐らくコロナが猛威を振るっていたのだろう)やら、色々な前置きをつらつらと語り、薫もそれを静かに聞いている。 もうこの間が学生同士の甘酸っぱい恋愛では味わえない絶妙なエモさというやつである。 「結婚してください」 このシンプルな言葉を伝える描写はあえてシンプルに。そしてそれに対する薫の返しもシンプルに。作者は大変わかっている。人が興奮している時の識字率は著しく低下することを。 単発としての作品の感想は以上だが、ここで終わると思ってくれるな。 これは連載化され、本編3話、幕間2話、そしてボーナスエピソードなっている。 先に結論を伝えよう。全編尊い。 幕間1「酒は呑んでも呑まれるな」はもうこういった尊いのによくある泥酔して普段は言えない素直な気持ちが溢れ出ちゃうやつだ。女性視点はよく分かる。私は女性だし、酔っ払った側の視点ではないにしても滅多に素直にならない恋人(酔っ払いver.)から出る「好き」の攻撃力はたまらない。 問題は陽人視点だ。 男性が普段恋人のことをどれだけ溺愛しているか、そしてそれを隠しているかなんて女性にはわからない。それをふわふわとした思考の中でも「綺麗だなあ」と思ってしまうくらいには溺愛しているなんて。 お前覚えていないと言っていたじゃないか、覚えてるんか。しかも忘れたふりをしていた理由が恥ずかしくて死にそうだから? ふざけんなこちとら尊さで死にそうだ。ありがとう作者。 第2話「俺と彼女とバレンタイン」は結婚指輪に関するエピソードだが、チョコレートが出てこないバレンタインネタでこんなに口角が上がることになるとは思わなかった。 というか婚約者になった薫が可愛い。女でも思うほど可愛い。彼氏からイベント事に絡んだ提案をされるだけでマスク越しでも分かるくらいるんるんって可愛すぎないか。 また、ここにも作者の語彙力というか文章の技術が詰まっている。特に私が好きな一文がある。 「いま、俺の手を掴んでくれているのが、薫の手で本当に良かった。」 コロナが猛威をふるい、街に出るときにはマスクは必須。お店に入るときにはアルコール消毒も必ずしなければならず、当時手が荒れてしまったことは記憶に新しい。 そんな中、寒い外でも手袋を外し、互いに手を繋ぐ。「夫婦になる」とはきっとこういうことなのかと、胸がいっぱいになってしまい、読み終えた頃には幸せのため息をついていた。 幕間劇「ふわふわ。ぽかぽか」以降、娘である那月が登場する。この子もとても可愛らしく、今までは大人の恋愛のむずむずするときめきと尊さで撃ち抜いてきたのに加えて、小さな子の無邪気なエピソードまで付け加えてくる。何かの法律に抵触している気がする。 まだ那月がお腹の中にいる間の幕間劇「ふわふわ。ぽかぽか」 今感想を書きながら、失礼のないように読み返してもここは幸せで手が止まる。この優しい陽の光に包まれた気持ちを文字に起こすには、私の文字は汚れている気がするので、ここは飛ばす。 ただ「大好き」だとだけ伝えておきたい。 最終話「ある家族の群像」では短い短編を繋いだ形になっているが、全てのエピソードがあったかい気持ちになれるもので、作者が「ハピエン村の住人」であることがよく分かる。 大きくなった那月と薫と陽人の3人の朝の日常。二つの家族まるで一つの家族のように食卓を囲んでいること。新しく授かった命が双子であること。孫パワーがもたらす幸せのお裾分け。お姉ちゃんになる自覚が芽生え始める那月。 無事に生まれてきた双子の名前を呼び、「生まれてきてくれてありがとう」と伝える那月はぜひ今後ものびのびと愛されて素直ないい子に育って欲しい。 ボーナスエピソード「木場くんと大宮さん」 木場夫婦の馴れ初め話である。恋愛脳としては1番尊い。 酔っ払いの女の子、しかも目の前で脱がれているときに、アルコールが入っている状態の男性の何%が手を出さずにいられるんだろうか。絶滅危惧種なんじゃないかとすら思う。 そしてお互い意識がしっかりしている状態での交際確認。もう大きな声で「好きです!!!」と叫び出したい展開である。 こうした朝チュンシーンでは大概男性が土下座をするものだが、薫が土下座をするというのもいい。あまりにもあざとすぎる女子よりさっぱりした女子がこうして柔らかい雰囲気男子にやらかすのは大好物だ。 ついでに自分が紳士で良かったという陽人にもちゃんと男を感じてとってもいいです、はい。 クリスマスプレゼントにアナログイラスト。しかも「重いかも」という自覚がある上で止められなかったと見受けられる。 確かに重い。だがまあまあ男に苦労してきた薫にとって、そのアナログイラストこそ、何ものにも変えられない最高のプレゼントに見えたことだろう。 不安に感じていた陽人への想いをここでしっかりと自覚している描写もとてもいい。 「細い指が、サラサラと頭を撫で、短い髪を梳いてくれる。その手が何度も触れてくれたことを思い出して、それがなんだか無性に嬉しかった。」 こんなに綺麗な文章で伝わる朝チュンシーンを私は知らない。尊いの権化がここにはあった。 「好き」伝える薫。「今更?」と返す陽人。1話とは逆の返しに伏線大好きの民としては大歓喜である。 以上が藤野悠人作「彼と彼女と」の感想である。 最初に伝えた通り私は元来作文が得意ではない。特に読書感想文なんて大嫌いだ。 だがこれを書いたが藤野悠人氏がしていると聞き、「本人がやってるならそれを送りつけられてもいい感じに受け流してくれるだろう」という大変な暴論を引っ提げてこれを書いている。 書き終わった今、思うことがある。 散々彼の文章を「やかましい」と揶揄ってきたが、私の文章も大概やかましい。