最近連載を始めた『異世界最強の節約勇者』ですが、これを書こうと思った理由を少しだけ書いておこうと思います。
異世界ものや勇者ものって、すごく好きなんです。
女神に呼ばれて、力をもらって、旅に出て、仲間ができて、魔王を倒す。あの王道の気持ちよさは、やっぱり強い。
でも同時に、ずっと思っていたことがありました。
「もし、そこに行くのが“若くてまっすぐな主人公”じゃなくて、46歳まで働いて、疲れて、でも生活感だけはやたら染みついたおじさんだったら、最初に見るのは何だろう?」と。
たぶん、世界の危機とか使命とかより先に、報酬や経費や宿代を見るんじゃないか。
強い武器より先に、補給や準備や固定費を気にするんじゃないか。
そしてそれは、ただケチだからじゃなくて、そういうところを雑にすると、人は本当に取り返しのつかない目に遭うと知っているからなんじゃないか。
そこから、この作品の主人公である田中剛が生まれました。
この話は、表面だけ見るとかなりコメディです。
女神にタメ口、魔王に家計簿、最強なのに宿代を値切る。
でも自分の中では、ただのネタ小説にはしたくありませんでした。
田中が「無駄は、人を殺す」と言うのは、極端な節約家だからではなく、その言葉を本気で信じるだけの過去があるからです。
だからこそ、どれだけ変なことを言っていても、本人の中では全部つながっている。
その“笑えるのに芯だけは本物”という感じを書きたかったんだと思います。
もう一つ大きかったのは、女神や魔王の描き方でした。
この作品では、田中が一方的に無双するだけではなく、エリュシアもネネも、田中の言葉で少しずつ揺れていきます。
世界を救う話というより、誰にもちゃんと見てもらえなかった者同士が、変な形で噛み合っていく話にしたかった。
派手なバトルだけではなく、買い出しや値切りや食事みたいな場面で関係が動く作品があってもいいんじゃないか、という気持ちもあります。
たぶんこの作品は、勇者が世界を変える話である前に、
「当たり前のことを当たり前だと言い続けた人間が、ようやくそれを押し通せる場所に来る話」なんだと思います。
笑ってもらえたら嬉しいですし、
その奥にあるものも少し感じてもらえたら、もっと嬉しいです。
