冬野結です。いつも『家を追い出された妻ですが、その家の土地は私名義。あなたのローン、最初から存在しないんですけど?』をお読みいただき、本当にありがとうございます。
このたび本作を読んでくださった方から、物語の決め台詞についてとても鋭いご指摘をいただきましたので、改稿のご報告をさせてください。
問題になったのは、クライマックスで遥が放つ「あなたには所有権も財産分与もない」という一言です。
実は離婚の財産分与は、「名義が誰か」では決まりません。決め手になるのは「婚姻中に夫婦で実質的に築いた財産かどうか」。だとすると、夫が十年お金を払い続けてきた以上、名義だけを盾に「あなたの取り分はゼロ」と言い切るのは、法律的には不正確でした。痛いところを的確に突いていただいた、と思っています。
ここは見過ごせない作品の背骨の部分なので、小手先ではなく根本から考え直しました。以下、未読の方の興を削がない範囲で、何をどう直したかだけ。
土地は、遥が父から「相続時精算課税」という制度(生前にお金を移し、相続のときにまとめて精算する制度)で贈与された資金で得た「遥ひとりの財産」。贈与で受け取った財産は夫婦の共有にはあたらないので、そもそも分与の対象外――という形に整理しました。そして夫が払い続けていたお金は、家を買う代金ではなく、実家の会社が建てた家に住むための“家賃”。使えば消えていくお金で、夫の財産としては残らない。こうすることで「夫の取り分ゼロ」が、名義という上っ面ではなく、法律の中身からまっすぐ出てくるようにしています。
さらに、ご指摘いただいた「名義ではなく実質で決まる」という原則を、今度は遥の側が逆手に取ります。婚姻中に家計から買ったものは、名義が夫であっても共有財産。その理屈を、遥が“請求する側”に回るための一手として効かせる結末を新たに足しました。同じ原則が、刃の向きを変えてもう一度効く――という二段構えです。現実の法律に照らしても、もう破綻しないはずです。
この作品は、登記簿や証拠を一つずつ積み上げ、淡々と詰めていく――その緻密さと、理屈の精度そのものが魅力だと思って書いています。だからこそ、立ち止まって考え、教えてくださる読者の方の存在が本当にありがたい。おかげでお話の芯が一段しっかりしました。ご指摘くださった方に、心からお礼を申し上げます。
改稿版を、ぜひもう一度味わっていただけたら嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。
★やフォロー、応援コメントもいつも励みになっています。ありがとうございます。