確定できることだけを書く。推測は書かない。感情も書かない。
保険調査員・水無瀬真は、手帳とペンだけを携えて現場に向かう。火災、密室、毒殺、目撃証言の食い違い。依頼のたびに訪れる土地で、彼は見たものだけを記録し、論理だけで事件の輪郭を描き出していく。
舞台は、雨の降りしきる南信州の老舗旅館から、蒸気が立ちのぼる登別の温泉旅館、霧に沈む函館の洋館、潮風の吹く港町のハーバーへと続く。
土地の匂い、建物の軋み、人が黙るときの間合い。水無瀬《みなせ》の目は、証言や痕跡の奥にある「なぜそうなったのか」を静かに、しかし確実に辿っていく。答えが見えたとき、彼は誰もいない部屋で呟く。「完成しています」と。
そしてすべてが終わったあと、いつものように呟く。「仕事辞めたい」と。
本格ミステリーシリーズ(執筆予定)
に更新