第13話から第15話まで、第五章「白馬将軍の下」を公開しました。
界橋の戦いが出てきます。公孫瓚(こうそんさん)の白馬義従(はくばぎじゅう)が、麴義(きくぎ)の弩に崩される戦いです。
記録では公孫瓚が負けます。この小説でも負けます。
主人公に勝たせることはしません。
歴史を動かした人は、記録に残ります。
記録に残っていない人は、歴史を動かしていません。
逆に言えば――何も動かさなかった人がいたかどうかは、記録では分からないのです。
だから彼がしたのは、糧車から俵を二つ下ろすことだけです。
車を軽くして、残りを運ぶために。
それで勝敗は一つも変わりません。だから、どこにも書かれていません。
記録には、思ったより余白があります。
桃園の誓いは、『三国志演義』の場面です。
正史『三国志』のほうには、あの誓いは書かれていません。
関羽伝に「寝るときは同じ床で、恩愛は兄弟のようだった」とあるだけです。
誓ったとも、誓わなかったとも書かれていない。
何人で誓ったとも、書かれていない。
そして蜀には、史官が置かれませんでした。
陳寿が『三国志』蜀書を書くとき、材料そのものが足りていない。
この小説は、そのあいだに立っています。
第五章から趙雲が出てきます。
白馬を誇る軍の中で、彼が迷わず馬を降りる場面があります。
書きながら、この人はこういう人だと納得しました。
次は第六章「徐州の灰」です。