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医療事務ですが、病院で謎を追っています! #3──神谷さん、料理の時間です!──

「はいっ、エプロン姿の神谷さん、いただきましたー!」

日曜の午後、某所のレンタルキッチンスタジオ。
篠田葵は、自前のスマホを片手にウキウキしていた。
その視線の先には、ぎこちなくエプロンを直している神谷蓮の姿。

「……なんで俺がこんなところにいるんだ?」

「“付き合ってください”ってお願いしたじゃないですか。料理教室が借りられるみたいなんで、一緒に作りましょうよ!って言いませんでした?」

「いや”めちゃくちゃ難しい問題があって、、、相談させてください”って言ってたから来たんだぞ」

「あと“付き合う”って単語、誤解を招くからやめろ」

「じゃあ“巻き込まれてください”で!」

「もっと悪い」

神谷はため息をひとつついて、目の前のレシピに視線を移した。
本日のメニューは「肉じゃがと味噌汁の基本セット」。

「包丁なんて握るの何年ぶりだ……」

「大丈夫です。だって、料理って“手順とロジック”の塊ですから」

「お前が言うとシステム開発系の話にしか聞こえん」

「その通りです! だから、失敗しません!」

満面の笑みで篠田はにんじんをトントンと切り始める。
その手際の良さに、神谷は思わず目を細めた。

「意外だな。手際、いいんだな」

「えへへ、実は料理好きなんです。リリース前のバグ対応より、こっちの“完成形”の方が安心感ありますし」

「なんだその基準」

神谷も仕方なさそうに包丁を構え、じゃがいもに取りかかる。
しかし──

「……あっ、神谷さん、そこは皮むいてからです!」

「……っ」

「しかも逆手っぽい……ああ、指っ!」

「ちょっと静かにしろ」

「もう、しょうがないなぁ……ここは相棒・篠田の出番ですねっ」

そう言って彼女は神谷の手元にそっと手を伸ばし、
じゃがいもの正しい持ち方と包丁の当て方を見せながら、言った。

「ね、思ったより難しいでしょ。でも、ちゃんと順番守れば……」

「ちゃんと形になるってことか」

「はい! システムと一緒ですよ?」

「……そう言われると、システム担当の俺が料理苦手なのが余計に納得いかないな」

「ふふ、それは経験値の問題です。今日でレベル1からスタートですからね!」

神谷は軽く鼻を鳴らしながら、それでも再びじゃがいもに手を伸ばす。
いつものように無口なまま、でも、その動きは確かに少しだけスムーズになっていた。

料理が完成するころには、湯気の立つ味噌汁の香りと、甘辛く煮えた肉じゃがの湯気に包まれて、
二人の間には、さっきより柔らかい空気が流れていた。

「……ほら、食べろ」

「わっ、神谷さんがよそってくれた……!」

「……今だけだ」

「はいっ、“神谷さん印の肉じゃが”いただきますっ!」

満面の笑顔で箸を伸ばす篠田に、神谷はそっと視線を落としながら、
手元の味噌汁を静かにすくった。

「……まぁ、悪くないな」

【あとがき】
恒例の作者の趣味コーナーになってしまいました。笑
今回は料理に挑戦する神谷さん!実は最初、神谷は料理もすごく得意という設定にしてました。でも、あんまり完璧すぎるのはよくないなぁって思って、料理が下手なりに練習する様をイメージして書きました。
今回はデフォルメされたミニキャラバージョンにしてみました!

2件のコメント

  • 可愛い!!
  • 栗パン様
    ありがとうございます!
    デフォルメされてるのもいいですよね♪
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