先日完結した『死に損ないの深い陰は嘘にぬれる』の登場人物についてまとめています。本編では記載されていない、余計な説明も置いています。
■樫と清澄について
喰われるために生かされた少年と、彼を喰らって咲く少年。二人が重ねていくのは、食事をして、点字を打ち、白を集め、嘘を本物にしていく日常です。この二人にとって、捕食と食事、傷と点字、痛みと温かさは切り離せるものではありません。日常の中で一緒にやってきます。
■樫 深蔭(かたぎ みかげ)
少年院の刑罰で合成肥料になりかけた死に損ないの少年。肥料の原材料 三二八号として終わるはずでしたが、特級適合苗床として園へ送られ、名前を返されます。ぶっきらぼうで、自分の身体をかなり雑に扱います。記憶に封印された空白があります。ハンバーグは冷めるまで絶対に手をつけない。
■清澄 靭(きよすみ うつぼ)
絶滅危惧種の全寄生植物。研究室で育てられた盲目の少年で、世界のほとんどを知りません。彼が最初に望むのは、知らないことを一緒に探すことです。深蔭から食事や色を受け取り、点字で言葉を交わしながら、少しずつ深蔭の内側へ根を張っていきます。無垢に見えてとても芯が強い子です。
■眞継 雅(まつぐ みやび)
成績が優秀なはずなのに開花せず、長くこの学園にいる半寄生の生徒です。一部の生徒からエルフみたいと噂されるのは、美しい容貌からか留年を繰り返しているからか。本人はどこ吹く風で、飄々としています。ジャージと便サンがトレードマーク。
■五代睦(ごだい むつみ)
剪定師志望の生徒。剪定科の新設まで暫定的にペアを組む眞継からは五代目と呼ばれていますが、眞継の苗床としては八代目です。クラスのムードメーカーで、一度会ったらだいたいダチ扱いしてくる良い奴。前のペアとの剪定で脳に後遺症を負っていますが、本人はかなり明るく振る舞っています。
■殻沢夏生(からさわ なつき)
もの静かな図書委員の生徒です。外骨格で顔が虫です。そしてギターが上手い。体育館のステージで、自分自身を開花の演目にします。自分の身体の中で進んでいく変化を、音楽として外へ出す人物でもあります。彼の話では、消費されることと、それでも自分の痕跡を残すことを書いています。
■古江と密葉
寄生と愛の境界が壊れたまま、教団を巻き込んで咲いたペアです。本編ではかなり激しい形で登場しますが、番外編まで含めると、彼らの関係は失敗や惨劇だけでは終わりません。本作品の中でも、咲いたあとのことと、次へつなぐ要素が強く出る二人です。
古江志新(ふるえ しあら)
全寄生種。自分の中にある本能に怯える生徒です。気弱で臆病な一方で、その化け物性を真正面から肯定する密葉から逃げきれません。寄生種としての成績が大変優秀らしい。
密葉和良(みつば かずら)
関西圏出身の苗床の少年。お洒落に気を使うタイプ。親から神樹との接続を期待されたけど適正がありませんでした。古江を愛し、彼の花を気高い怒りとして崇めています。
■樋口と四十八願
効率だけを突き詰め、感情をゲームというリアルの外へ逃がしたペアです。一見すると一番ドライな二人ですが、番外編ではまた違う側面が見えると思います。この二人にとっての寄生は、ネットワーク、ゲーム、認知、ログアウトのできなさと結びついています。
樋口叶夢(ひぐち とむ)
全寄生かつ腐生型の生徒。授業中も構わずゲームに没頭しています。同じクラン所属の推しに熱をあげ養分扱いされて喜びます。英語の時間に名前を弄られがちです。
四十八願健(よいなら たける)
一家が貧困ビジネスの餌食になっており、底辺から抜けるために自ら苗床になった生徒。自らを換金アカと嘯きます。与謝野をエナドリ沼に沈めた元凶。
■与謝野と沙倉
生徒会の二人。学園の中では安定感のあるペアですが、彼らにもそれなりの執着や所有欲があります。表向きは華やかで園の社会生活を回すけど、寄生植物と苗床の関係が明るいだけで済むはずもなく、そのあたりも少しずつ出しています。
与謝野保(よさの たもつ)
生徒会副会長です。半寄生種ですが自分から気苦労を背負い込みがち。詩が好きで、中原中也に被れています。実務では砂糖少々みたいな表現が許せないタイプです。
沙倉柊夜(さくら しゅうや)
苗床だけど生徒会長です。春の光をそのまま形にしたような独特の覇気があります。お父さんもお兄さんもそっくりの顔すぎて、野蒜先生は顔の見分けがつきません。
■檀 清史郎 (だん せいしろう)
半寄生の元生徒会長。卒業間際に交通事故で苗床を失い、剪定の後遺症で車椅子生活を送っています。ペアを失ったショックから戻れておらず自我が薄め。仏壇のような重い香りを纏わせています。眞継曰く、エロ本に反応したから復活する可能性があるとのこと。
■樅山 岳斗(もみやま がくと)
途中から園に来た、方言強めの元ヤン苗床。昔の武勇伝と魔改造チャリの話をしてくれます。眞継からは縦山(たてやま)と弄られがち。騒がしいけれど、人の地雷を踏まないように気を遣うところもあります。ヤングケアラーだったのか、車椅子の介助がやけに慣れています。
■野蒜 泰成(のびる やすなり)
樫たちの担任の先生です。隻腕で、ヘビースモーカーで口が悪く、いつも面倒ごとに巻き込まれています。元半寄生で、昔は色気が凄かったらしいです(眞継談)。
園の制度を肯定しているわけではありませんが、生徒たちが少しでもマシに生き延びられるように動く、現場型の大人です。
■菅 依子(すが よりこ)
清澄靭の研究者であり、実質的な保護者のような立場の人間です。研究者としての顔と、靭を育ててきた人間としての顔の間で、ずっと揺れています。深蔭と靭にはだいぶ振り回され、怒ったり泣いたりしながらも、二人の開花を最後まで見届ける重要人物です。魚のウツボが好きすぎて、グッズ集めが癒し。
■真田條(さなだ じょう)
寄生学を教える非常勤講師です。運命の終宿主を求めるロマンチストですが、上昇志向も強いので宿主を頻繁に乗り換え、終宿主候補と見れば生徒にも平気で介入します。現在は教頭に寄生中。黒板には難しげな数式、口から出るのはだいたいポエム。生徒たちは毎回混乱しますが、言っていること自体は役に立つので、非常に厄介な先生です。
■最後に
この作品は、派手な事件だけで進む話ではなく、日常の中で少しずつ根が張っていく話として書きました。なんでもない動作一つひとつに痛みも捕食も、開花も温かさも入っています。
登場人物たちはみんな、それぞれのやり方で咲こうとしています。深蔭と靭の二人を中心に、彼らの名前や身体や言葉がどこへ根づいていくのか、見届けてもらえたら嬉しいです。