私は架空の植物を考えるのが好きです。
花の色や形はもちろんですが、別の生き物とどのように関わりながら生きているのか、妄想に耽るのが好きです。
現在連載中の中編『死地に咲く一輪を手折る墓守の話』に登場する花にも、私の癖がかなり出ています。
君懸草は、花嫁へ贈る花であり、帰らなかった騎士の花であり、亡き主へ捧げる弔花でもあります。もとは、私が子どもの頃に創作した、騎士キミカゲの死と、大蛇の毒、彼を待っていた精霊から生まれた花でした。
作中では、ホムンクルスたちが亡き主の墓へ君懸草を供えます。かつて恋する相手へ贈られた花が、長い時を経て、君主へ身を懸けた者たちの弔花にもなったようなイメージです。
第三話の終盤で、ロアは余った君懸草をリュディアの髪へ挿します。忠誠の花として墓前へ運ばれた君懸草が、そこで再び愛する者へ贈る花として扱われます。
凌蠕花は、大蟲の腹の中に咲く花です。
線虫群と相利共生し、線虫の粘液によって消化液の作用を避けます。根は呑み込まれた者の遺物に絡み、そこから微量の金属分や魔力を吸い上げます。
花だけでは生きられず、線虫だけでも同じ場所には留まれない。その関係ごと、大蟲の体内に組み込まれています。
作中では、腹の中に閉じていた凌蠕花が外へ持ち出され、やがて大蟲の居場所を知らせる光になります。異形の腹中に根づいていたものが、別の場所では人を生かす標になる。
以前にも、寄生植物と人間の関係を描いた長編『死に損ないの深い陰は嘘にぬれる』を書きました。
私は、そういう関係が好きなのだと思います。誰かの内側に根づくこと。奪うことと与えることが、きれいに分離できない物語が。
君懸草は第三話「三度参れ」、凌蠕花は第六話「腹の蟲が咲いておるな」に登場します。