今回いちばん悩んでいるのが、年代と年齢の問題です。
この物語は、少年ハンニバルが父ハミルカルに連れられ、イベリアへ向かう時期を軸にしています。ハンニバルには、幼い頃に父の前でローマへの敵意を誓わされたという有名な逸話があり、本作でもその頃の年齢感を大切にしたいと思いました。
そのため、舞台を前237年前後に置くと、ハンニバルは十歳前後となり、「まだ少年でありながら、すでにバルカ家の人間として育てられている」という姿にはかなり合います。
一方で、この年代だと、後にハンニバルと対峙するプブリウス・コルネリウス・スキピオは、まだ生まれていないか、せいぜい乳児ということになります。つまり、ハンニバル、ラピス、スキピオの三人を近い年頃の子どもとして並べるには、史実上の年齢とはどうしてもずれが出てしまいます。
かといって、スキピオの年齢に合わせて年代を下げると、今度はハンニバルが青年になりすぎてしまいます。そうすると、この作品で描きたい「シラクサで出会う子どもたち」の空気が変わってしまう。
そのため、本作では物語上の都合により、スキピオの年齢・登場時期を調整しています。
史実をそのままなぞるというより、後にローマとカルタゴを背負うことになる少年たちが、まだ互いの未来を知らない時期に出会っていたら、という形の歴史小説として読んでいただければと思います。