突然ですが。私は疲れてます。六月ってなんでか行事が多い……おばさん体力ないのに大変です。体が疲れてるときって思考力も低下します。こういうときに無理に頭を使ってもろくなことにはならないので。ドラゴンブックコンテストへの挑戦は潔く諦め、リラックスタイムを設けつつLotusの更新に集中することにします。……なんて言ってて突然新作あげやがったら、今度こそ蹴り飛ばしてくれて構いません、ええ。
ということで、久々の読書メモもゆったり行きましょう……と思ってたのですが。そうもいかなくなってしまいました。それくらいに感動です。
今回は児童文学からです。
『こんにちはアグネス先生 アラスカの小さな学校で』
著者 カークパトリック・ヒル/訳者 宮木陽子
……控えめにいって、素晴らしいです! 温かい感動で涙が出ます。号泣です。人生に必要な普遍的な教えみたいなことが、さらっといっぱい描かれてるのですよ。七つの賞を受賞されてるそうで、納得です。
舞台は1948年のアラスカ。生徒が十二人の小さな学校にやってくる先生はみんな長続きしない。何人も何人も先生が代わった中で、今度のアグネス先生はなんだか違う。
物語の中で事件らしい事件は起こりません。アラスカの小さな村の様子やその村で暮らすアサバスカ族の人々の暮らし、学校での授業の様子や先生とのやりとりが、主人公フレッド(女の子です)の一人称で語られます。
このフレッドの語りが素晴らしい! 端的でリズムよく、そしてとにかく味がある。味があるのです。
フレッドの姉のボッコは耳がきこえない。専門の学校があることは知っていても、そもそも学校が嫌いな母親はボッコを学校に行かせなかった。それを知ったアグネス先生はボッコも学校に通えるようにするんですね。で、そのことでお母さんとおじいちゃんがケンカになって、そのケンカの後でおじいちゃんがフレッドに言うんです。以下抜粋。
「なあ、フレッド、おまえも知っとるとおり、おまえの母さんはさんざん苦労してきた。耳のきこえん赤ん坊をもつのはつらいことだ。それにおまえの父さんは病気になって遠くの病院に行き、死んでしまったからな。こんなに運が悪いと、まあ、そうそう人にやさしくもしておれんのだ。そこんところをわかってあげなくちゃな」
おじいちゃんたら、母さんをどなったのがあたしみたいないい方をした。ほんとうは自分なのに。(p69より)
こんなふうな味のあるエピソードでいっぱいなんです。
学校は子どものためだけにあるのではない、人は生涯、勉強を続けなくてはいけない、とアグネス先生はいった。(中略)勉強というのは、学校に行ってるあいだに、急いでなんでもかんでも学ばなくてはいけないというものではないんだ。ゆったりした気持ちで時間をかけてもいい。勉強は楽しむものなんだ。(p81より)
日本の教育現場こそこういう考えになってくれればいいのにって思います。うちの息子は週に一回、授業を抜けて情緒級に行ってます。そうでなくても授業をしっかり受けないで(昨日なんか漢字テストを名前も書かずに白紙のまま持って帰って来た。彼はその時間どうしても算数の復習をしたかったそうです……)その分のプリントや書き込みを家でやるようにしています。学校の先生は学習の遅れというのをとても気にされるのです。 それが病院の専門医に言わせると、そんなことはいいんだよってなるので、親としては板挟みで苦労するところです。……はい。愚痴です、すみません。
話逸れました、すみません。アサバスカ族の生活も興味深くて良いのです。各シーズンになると家族ごとに狩猟キャンプに向かいます。子どもたちもお手伝いがあるからその間学校に行けなくなるのだけど、子どもたちは働くことにも学ぶことにもとても真摯で、そして明るい。
もうほんと胸がじんわりして涙が出ます。これはまた何度でも読んでしまう一冊だと思います。
今回は以上です。