生業でどこのは知っているが笑、誰かはほぼ知らない人の家に上がり込むことが時々ある。大きなマンションだと続けて何軒も上がることになる。上下階の部屋だと同じ間取りのはずが、リフォームしたのか間取りが異なる階もあったりするし、玄関に入るといきなり物がどこもかしこもあふれている家も珍しくない。すごく立派で見るから値段の高そうなオーディオ機器を並べているのにレコード1枚、CD1枚見当たらない家もあった。「八景」は本来美しい景色の意味で、そこには常に発見と驚きがあるだろう。それぞれの家庭のあり方は、人の営みとして見方を変えればそれなりに発見と驚きの連続である。ある時、お邪魔したお宅でけっこう強烈に記憶に残るものがあった。世の中、情報とものがあふれているが、片方でミニマルライフを求める人も多くいる。お邪魔したのは高齢男性の一人住まいの家だった。大きな間取りのマンションの一室に彼は住んでいたが、その家のなかは、ものが極端になかった。普通の家庭にあるような食器棚やソファ、ローテーブルなど何もなく、広いLDKにちいさなテーブルが一つだけ置いてあった。おそらく自分が亡くなった後、家族、たぶん子どもの世帯なのだろう、に迷惑かけないよう必要なもの以外は全て処分したのだと思われる。赤の他人としてはもちろん無責任ではあるが、彼自身が死ぬのをひたすら待っているように思えた。たぶん、体調が悪く感じられたら残りの家具やわずかな食器もすべて処分するのだろう。まさに消えるのだ。まぁ、それも人生だ。しかしこの世は発見と驚きに満ちあふれている。