「💋独裁者の妹」
第11話(1) 与純のアジト
無人島に俺と一緒に流れ着いたのは西側が狙う北の独裁者の妹。冷酷非道で究極のタカビーな彼女はドSからドMへと狂おしく堕ちていく。
https://kakuyomu.jp/works/2912051605627874371/episodes/2912051606611582580 車内は冷え切っていた。運転席の明順と助手席の与純が交わす言葉は、終始英語だった。
「ドレスデンまで約百七十キロ。二時間弱で到着します」
「急いで、明順。モスクワの連中も、平壌の政治将校たちも、私たちの足取りを必死で追っている頃よ」
「了解しました」
俺は与純に「これからどうするつもりだ?」と日本語で尋ねた。
すると、バックミラー越しに明順の冷たい目が俺を捉えた。
「私には日本語はわかりません。彼女と話すときは英語でお話を」
明順が短く言い放つ。与純が振り返り、気だるそうに肩をすくめた。
「そういうことよ、拓也。これからは英語で話して。彼の前で変な誤解を招きたくないからね」
「……わかったよ」
「どうするって、プラハに行って、アジトに潜伏するのさ」と蓮っ葉な英語で言う。
アウトバーン13号線を南下するメルセデスのタイヤが、夜のアスファルトを切り裂くように進む。そして出発から二時間弱、ドレスデン空港の裏手にあるプライベートジェット用のゲートに滑り込んだ。
トラブルは税関の検査で起きた。
職員の男が、与純の首に巻かれた頸椎カラーに目を留めたのだ。
「外すことはできますか?」
「……?」
「その首の装具です。セキュリティ上、一度外してX線に通していただきます」
職員の口調には、明らかに疑いの色が混ざっていた。与純は時間を惜しむように小さく息をついた。
「いいわよ」
彼女は俺を手招きし、後ろからカラーを外すよう促した。俺がマジックテープを剥がし、鉛の薄板が仕込まれた重いカラーを取り外して職員に手渡す。
「おっと……ずいぶん重いですね、これ」とX線機械のベルコンに乗せながら職員が与純に言った。