サイドa
運命的な出会い、ではないかもしれない。
それでも、私は思うのだ。
これは運命だったんだと。
私の仕事は異動が多くあり、様々な地域に異動を命じられる。
そんな中、地方への異動を命じられました。
新しい職場に移るのは期待もある反面、不安もあります。
その不安とは?
私は太っているのです。
元々、食べるのが大好きなのに、運動するのは好きではないので
気づいたら、一般の人から比べたらかなり太っていたのです。
見た目にコンプレックがある私は、自信なささげに
新しい職場で自己紹介をしました。
浅田健一です、、、
皆がどんな気持ちで受け入れてくれるのか心配でたまりませんでした。
そんなとき、アルバイトで働いていた、彼女が言ってくれたのです。
浅田健一さん、っていうんですね、
じゃあ、浅田さんのこと、【あっくん】て呼んでいいですか?
無邪気に笑いながら、そんな事を言う彼女を見て私は素敵な人だな、
と思ったことを覚えています。
私だけにでなく、周りにも気を使いながら働く彼女に私は惹かれていました。
自己紹介の時には【あっくん】て呼んでいいですか?
なんて言っていた彼女ですが、
実際の職場では私の立場を尊重して【浅田さん】と呼んでくれていました。
そんな彼女に想いを馳せていた私は、
仕事中の、ちょっとした合間に、私の想いを伝えました。
振られることを覚悟しての告白だったのですが、
意外にも彼女はこういったのです。
『あっ君からそう言ってもらえるの、ずっと待ってたんだよ』
そして私と彼女と結ばれました。
私は彼女を幸せにすることを心に誓いました。
今では、子供もできて幸せな日々を送っています。
これから生活していく中で、色々な事があるはず。
でも、あの時感じた気持ちさえ忘れずにいれば、
ずっと幸せに生きていけるんだと思います。
サイドb
最近、妻との会話はない。
あれほど幸せを感じていた、あのころが懐かしいとさえ思えない。
それほど冷めた関係に、私たちはなっていた。
それでも私は、関係を復活させるべく、
太りすぎていた体をもとに戻すために20キロのダイエットを敢行した。
毎日数キロのランニングを行い、かなり体も絞れてきたのだが、
妻は、そんな事には興味を示す様子もない。
小さかった息子も今は大きくなって
今では習い事として塾に通い、空いた時間はゲームに夢中になっている。
少しずつ大人になっていく息子の姿は頼もししく見える反面、
わずかな寂しさも。
子供が大きくなるににつれて、
今住んでいる家は手狭だなと感じている。
親バカと言われるかもしれないが、やはり子供には少しでも
良い環境を与えてあげたい、というのが親心なんだな、と思う。
そんなことを考えていたある日、私は妻に相談を持ちかけることにした。
ここ数年、まとも話すことがなかった妻に、
こんな話を持ち出そうと思ったのは、
やはり子供が可愛いかったのだろう。
私は妻に言った。
『子供も大きくなってきた事だし、新しい家を建てないか?』
会話という会話がなくなっていた、妻にこのような提案を
告げるのには、想像以上の勇気が必要だった。
妻は私の言葉を聞いて、ゆっくりと私に顔を向けて言った。
篤史はそれでいいの・・?