(注:本編とは違い、二人は付き合ってないです。鷹谷さん登場してて違和感感じるかもしれませんが、IFストーリーですのでご容赦ください。以下本文です)
朝起きた時に何か違和感を感じたが、私は登校の時間が迫っていることに気づいて慌てて準備を始めた。この違和感は何だろうか、と思いながら玄関を出る。
「おはよう、のどか」
キラキラと眩い笑顔で私に挨拶をする麗奈。違和感はこれかと思いながら、私は朝から推しの超絶キラキラ最高の笑顔に灰にならないよう踏ん張りながら「おはよう」となんとか返した。
「鞄くらい自分で持てるよ。それにこんな重いもの、のどかに持たせるわけないじゃん」
「今日も良い天気だね。私、今日も頑張ってお弁当作って来たから、日当たりの良いところで一緒に食べよ?」
「ほらここ、ご飯ついてるよ。全くのどかってばおっちょこちょいなんだから」
二つの鞄を持たないことで空いた両者の手は握られ、お弁当はいつもよりもなんだかハートの飾りがやたらと多く、用意されていたレジャーシートは狭いからと膝の上に座らされて麗奈の手づから食べさせられた。
ドンッと机に手をついた私は思いっきり息を吸い込んだ。
「眩しすぎて目がくらむっ…!」
朝から鞄は持たせてもらえないわ、よく話をしてくれるわ、気にかけてくれるわ。それも全てキラキラ笑顔で繰り出されるので、毎回灰になって風に飛ばされないように我慢するのが大変だ。そろそろ眼球も強い光に耐えられなくなってきた。
「性格が良い麗奈ちゃんは解釈違いだよぉ…!でも最高だよぉ…!」
「長時間笑顔の藤峰さんは確かに不思議な感じしますね」
「笑顔は見る人だけではなく自分も幸せにしてくれる不思議な力があるからね。私は藤峰さんの笑顔、とても好きだよ」
「私のライフはもうゼロよ…」
机に突っ伏す私を茂部さんと鷹谷さんが慰めてくれる。
「のどか」
名を呼ばれて振り返るまでもなく、声を聞けば誰か分かる。
「麗奈ちゃ、うっ!眩しい!」
キラキラ笑顔の麗奈がそこに立っていた。相変わらず眩しすぎて目がそろそろつぶれてしまうかもしれない。麗奈は良い笑顔のまま、そろそろ授業が始まることを教えてくれる。私は感謝を伝えて慌てて次の授業の準備を始めた。
「…松脇さんが見てないときはあんまいつもと変わらない気がするんですけど」
「ハハハ!笑顔と真顔の落差が凄いね!」
下校中。隣を歩く麗奈はやっぱり笑顔で、眩しくて、沢山話をしてくれて。
足を止めた私に怒ることなく、どうしたの?と顔を覗き込む麗奈は、鞄持たせたりしないし、人を雑に扱わないし、優しい。でもそれは、私の知っている麗奈じゃない。
「麗奈ちゃんは、麗奈ちゃんは…!人のこと見下して雑に扱って冷たくあしらって、でも自分の顔面の良さを理解しているから「どうせ許すじゃん」って高いところから人を跪かせて笑うような人なの!そんな、性格に難があるのが麗奈ちゃんなの!」
麗奈の手を取り、私は潤む目でなんとか麗奈の目を見る。
「お願いだよ…。いつもの麗奈ちゃんに戻って…?」
「っ~~~!」
何やら息を飲んだ麗奈が顔を伏せる。どうしたのだろうか。
「優しくしてあげてんのにさ、こっちの気も知らないで…!」
「麗奈ちゃん…?」
小さな声で何か言った麗奈は勢いよく顔を上げてぐっと私を引き寄せる。
「本当に、馬鹿のどか」
近づいていく顔。最後に見た麗奈の顔は、いつもよりも少しいじわるで、でも頬が赤くて、私は目を反らせなくて、そのまま顔が近づいて———
「のどかー!早く起きなさーい!」
母の声で目が覚める。ガタッとベッドから落ちた私は頭を押さえた。まさかの夢落ちである。夢は自分の願望の反映、なんてことを聞いたことがある。それが本当なら、あの夢は私の心の底の願望と言うことだろうか?最後、目が醒めなければ、近づいてくる麗奈とあのまま、きっと両者の口がくっついていただろう。あれも私の願望?と考えて、私はあまりの羞恥にボフッと布団に突っ伏す。
「私ったら、推しで何てことを考えてるの…!」
母からの再度の催促に慌てて部屋を出る。
玄関を開ければ麗奈が同じタイミングで家を出て、「ん」と鞄を渡してくる。
「…何ニヤニヤしてんの?キモ」
これだ。この冷たくて傲慢で言葉の悪いのが麗奈である。いつも通りの麗奈に安心すら覚えてしまう。
「やっぱり麗奈ちゃんはいつも通りが良いね!」
「は?意味わかんない」
すたすたと私を置いて歩く麗奈を私は笑顔で追いかける。
「…せっかく優しくしてあげたのに」
「ん?どうかした?」
「別に」
「そうそう、私夢で優しい麗奈ちゃんに会ったんだけど、なんかその優しい感じが鷹谷さんに似て、っいたぁ!え!なんで?!なんで突然の暴力?!」
「………」
「なんでなの麗奈ちゃん!」
今日も私の推しは超絶美少女である。