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亜盟

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  • 6月19日

    新作出しました!

    色々と忙しくて全く進んでいなかった新作です。ようやく1つ目のエピソードが全部書き終わったので、今後は不定期で連載していきたいと思います! タイトルは「怪獣命名n箇条」 明日と明後日にも投稿します。
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  • 3月6日

    今後のこと。

    風鈴が溶けるほど。が一段落し、いよいよ「カクヨム」の大海に本格的に飛び込む覚悟をしなければいけないときになりました。これからは「初心者」という言い訳をしないように頑張りたいと思います。と、いうことで今後のことについてです。 いつになるかはわかりませんが、後々おれおがメインになって作った小説も出そうと思います。 あと、短期連載の構想も立ててるので、それも長い目で待っていただけると光栄です。 5月あたりまでにはなんか投稿したいな。 Twitter(Xとは呼びません!)の方は適当に不定期で更新していきます。 好きな音楽や本などのとりとめもない投稿がほとんどですが、少しでも共感してい ただけると嬉しいです。 それではまた。 by避役
    • 2件のいいね
  • 3月1日

    【原作】風鈴が溶けるほど

     原作です。ぜんぶ避役が書いてます。  夏が好きだった。  正確には、夏にしかない、体の中からどうしようもなくにじみ出るような、あの特別な感覚が好きだった。  でも、いつからだっただろうか。夏にそんな感情を抱けなくなったのは。  部屋の掃除中、何気なく、埃をかぶったアルバムを開く。  小学校の入学式の写真。 「なつやすみ、はやくこーい。」 「おれもー。」 「わたしもー。」  その年の夏、そんなふうにはしゃいだあいつらが、僕の両隣で無邪気に笑っている。  小学四年生の運動会の写真。 「夏っていいよなー、花火もあるし、そうめんもあるし、かき氷もあるし、風鈴だってなん つーか、フウリューってやつじゃん。」 「そういえば、このまま地球温暖化が進むと、毎日が夏になるらしいよ。」 「ははは、そうなるのも悪くねえな。」  そんなゆるい会話をした学級委員が、ダンスのポーズを決めている。  中学校の入学式の写真。 「『入学式にふさわしい爽やかな春』なんて言うけどさ、もうほぼ夏だよな。」 「そうだね、地球温暖化のせいだ。怪談もプールも、風鈴だって、少し前までは七月や八月 のものだったのにね。」 「ったく、わけもわからん会議するより、温暖化止めろ大人たちー。」 「そーだそーだー。」  そう一緒に叫んだあいつらが、僕の前の列で緊張した顔で立っている。  中学入学の年から地球温暖化のスピードは急激に加速し、他の季節はどんどん夏に侵食さ れていった。三年前の四月には冬が消えた。二年前の十月には秋がなくなった。今年の一月 には春が来なかった。  そして、二〇二八年十一月七日現在、地球上の季節は夏だけになっている。花火の音は週 に一回以上鳴り響き、最近ではそれを公害だとうったえる声まで出ている。かき氷とそうめ んばかり食べているため、日本人の多くは栄養不足になり健康問題に悩んでいる。今や街に欠かせなくなった風鈴売りは後継者不足に悩み、風流どころではなくなっている。  小学校の体育の授業は一年を通して水泳が多くなり、プールが苦手な生徒たちはいつも不 満を言っている。幼稚園の読み聞かせは全て怪談になり、保護者から大きな不評を買ってい る。  あの頃は青春の「象徴」だった夏が、ただのありふれた「日常」に、そして厄介な「現 状」になった。夏は、もう特別ではなくなってしまった。 「掃除、はやく終わらせてね。」  台所からの母の声で、はっと我に返る。 「うん、あともう少し。」  そう言いながら本やらプラモデルの箱やらをクローゼットに押し込む。 「終わったら塾に行くのよー。」 「はーい。」  塾のワークブックがぎっしり詰まったリュックサックを背負って家を飛び出す。十一月に なり、さすがに猛暑ではなくなってきたが、外に出ればまだまだ額に汗がにじむ。  勉強は好きじゃないが、友達に会えるから塾は好きだ。入口のドアを開け、自習室の奥を 見る。よかった、もういる。一番奥の机が彼の定位置だ。  諸星仙。僕の親友だ。二年前、塾の授業で隣の席になった時から不思議と馬が合う。カー ドゲームの話やプラモデルの塗装の相談でいつも盛り上がっている。が、今日の話題は予想 もしていないものだった。 「なあ、『もう夏には飽きた』って言ってたよな。でも、この地球上にまだ冬が残っている 場所があるらしい。行ってみたくないか。」  一瞬驚いたが、こういう眉唾な情報を何も考えず信じてしまうのが、仙の最大の短所であ り最高の長所だ。僕はすぐに返した。 「どうせ、ネットの情報だろ。何度も言ってるけど、そういうの鵜呑みにしないほうがいい ぞ。冬はもう地球からなくなったんだ。」 「まあ、確かにちょっと怪しげなサイトだったけどな。」 「もし本当にそういう場所を探したいなら、図書館にでも行くんだな。」  冬を思い出したいなら、冬を舞台にした小説でも読めばいい。そんなことを思いながら、 ふと、仙の机の上を見る。理科のノートのようだが、端に小さく何か書いてある。のぞき込 んでみると「飽和→過多」と書かれている。  そうだ。僕らが夏に特別な感情を抱けなくなった理由。夏が飽和したから。そして、過多になったから。  一週間後、仙から電話があった。 「なあ、やっぱりあったぞ。」 「なんのことだ。」 「この前話したろ。冬が残っている場所。」 「待て、仙、お前今どこだ。」 「図書館。これからお前の家の前の公園に行く。」 「え。」 「とりあえず頑丈なペットボトルと、発泡スチロールの箱を用意しておいてくれ。あとは 俺が準備する。」 「お前、何する気だよ。」 「じゃ、あとで。公園でな。」  何考えてんだよあいつ。  どのくらい待っただろうか。公園のベンチに座っていたら、大きな声が聞こえた。 「きたぞー。」  そう叫ぶ仙は、顔が赤く、声も少し震えている。走ってきて息切れしているようだ。 「例のもの、用意したか?」 「ああ、一応持ってきたけど・・・。」 「ナイス。」 「で、何なんだいったい。」  そう聞くと、仙はバッグから本を取り出した。背表紙には分類シールが貼ってあるので、 図書館から借りてきた本だろう。タイトルを見ようとすると、仙が手で隠す。 「おい、見せろよ。」  僕がそう言うと、何も言わずニヤリと笑ってこっちを見た。 「まぁまぁ、それはお楽しみにしておいて、すぐに実行だ。」  仙は本にを開き、読み上げる。 「『大きな発泡スチロールの箱とそのフタを用意し、ペットボトルがピタリと収まる大きさ の穴をフタの真ん中に開けます。』はい、箱とペットボトル出して。」  言われるがまま、プラモデルの塗装の囲みに使う発泡スチロールの箱と、サイダーが入っ ていたペットボトルを差し出す。仙は意外にも器用にカッターを使い、フタに丸い穴を開け た。 「よし、次。『ペットボトルの内部を湿らせ、水蒸気を入れます。』これは息を吹き込ん じゃえばいいらしい。それから『おもりをつけた釣り糸を、ペットボトルの中に吊るしま す。』」  仙は、3号のおもりがついた2号の釣り糸をペットボトルの中に垂らし、きつくゴム栓を 閉めた。 「『箱にペットボトルを入れ、そのまわりにドライアイスを詰め込んでフタをする。』 と・・・。」  ゴム手袋をした仙が、持って来たクーラーボックスを開けてドライアイスを取り出し、箱 の中にどんどん詰めていく。そしてフタを閉め、全体の三分の一ほどフタから出ているペッ トボトルの中を見始めた。  長い沈黙が続いた。仙は額に汗を光らせながら、フタの穴から出ているペットボトルの中 を黙って見ている。 「おい、なんだよ、俺にも見せろよ。」  しばらくすると、仙は無言でペットボトルを指差した。 「あっ。」  思わず声が出た。釣り糸が、真っ白な雪の結晶をまとっていた。  飽和した夏を振り払うかのように、サイダーのペットボトルの中には冬があった。  僕は、仙の顔を見上げる。仙は、自慢げに隠していた本を突き出す。タイトルは『冬のつくり方。』  二人でペットボトルをもう一度のぞき込む。  どこかでキンと風鈴が鳴った。  僕は今、もう一度、夏が好きになる。