※ガチャ姫の外伝SSです。
本編とは別時間軸としてお楽しみ下さい。
椿が新年を迎えようとしている時、O張武家屋敷では大掃除が行われていた。
新築の為さして汚れてはいないものの、やはり綺麗にして翌年を迎えたいという気持ちから行われていた。
門の周りを掃き掃除する魔軍、定期的にやってくる屍人の防衛柵を建て直すエーリカ。ついでに周囲の屍人を掃除するレイラン。
それぞれテキパキと新年を迎える準備を行っている。
そんな中、屋敷の中庭では俺と銀河がペッタンペッタンと餅つきを行っていた。
銀河が杵で餅米をつき、俺が蒸し臼の中の餅をくるくるとひっくり返す。
「腰が入ってないぞー」
「は、はいっ頑張ります!」
彼女が勢いよく餅をつくと、メイド服のスカートからチラチラと純白の下着が覗く。
ガーターベルトと相まって実にグッド。
このクソ寒い中でもミニスカメイドをさせていて良かったと思う。
「え~いっ!」
彼女が片足を上げ、一際大きく振りかぶると切れ込み鋭いパンツがほぼ丸見えになる。
白のレース柄までばっちり見え、視線が完全に釘付けになってしまう。
んほぉ♥ パンツ丸見えなのぉ♥ とガン見していると、餅をひっくり返す手を抜くのが遅れ、思いっきり杵でぶん殴られる。
「んほぉっ! 痛すぎなのぉ!」
俺は赤く腫れる手をおさえてもんどり打つ。
「お、お館様申し訳ございません!」
「い、いや、いいんだ、俺の不注意だったから気にするな」
フーフーっとジンジンする手に息を吹きかける。
「王よ、調子はいかがですか?」
そこへ、追加の餅米を持ってきてくれた、俺の嫁ことディーさん。
いつもはバンデッドビキニアーマーだが、今は深い藍色の生地に、O田家の家紋が刺繍された和装の羽織を着ている。
金髪和服美女というのも実に絵になる。
銀河は「ひーん」と彼女に泣きつく。
「ディーさん、自分が下手くそなせいで、お館様にお怪我を負わせてしまいました」
「大方銀河のパンチラでも覗いて、手を抜くのが遅れたのでしょう」
めちゃくちゃバレとる。
「ああそうだが? メイドのパンツ見て何が悪いのか」
「めちゃくちゃ開き直ってるじゃないですか」
「はうはう」
銀河は恥ずかしげに内ももをすり合わせながら、スカートの裾を引っ張る。
「そうだディー、今度はお前が餅を打て」
「私がですか? 構いませんが……」
ディーは銀河から杵を受け取ると、早速餅をつこうとする。
「まぁ待てディーよ、餅をつくと暑くなる。上を脱いだらどうだ?」
俺は彼女の着ている品の良い羽織を指差す。
「まぁ構いませんが」
俺はディーさんの羽織の紐をシュルリと抜いて、卵の殻を剥くように脱がす。
二つのたわわなおっぱいが、シルバーメタルのスカルブラに包まれており、一枚脱ぐだけでガラリと雰囲気が変わる。
いつものビキニアーマー姿のはずなのだが、なぜ脱がすという工程が一つ入るだけで、これだけエロく感じるのか。
「それでは行きますよ?」
「ああ」
ディーは長い金髪を軽く揺らしながら、ペタンペタンと餅をつく。
俺とディーの息はあっており、まるで熟年夫婦のような、まるで熟年夫婦のような(強調)。息の合い具合で、餅をつく。
「ディー、もう少し早くしてもいいぞ」
「わかりました」
タンタンタンタンと小刻み良い音が蒸し臼から響く。
「わー凄いです、さすがディーさん」
銀河も手を打って喜ぶ。粒立っていたもち米は徐々に一塊になり、粘度を増していく。
数十回杵を振り下ろしていると、ディーの額に汗が滲み、息も弾む。
俺はそろそろ頃合いか……と、まるで玄人職人のような鋭い目でディーの方を見上げる。
すっかり油断した彼女は、ペースよく杵を振るっている。
その度に彼女の胸についた二つの胸も、勢いよく跳ねる。
「ペッタンペッタン、ボインボインと」
「王よ、ちゃんと手元を見てないと危ないですよ」
「いや、もう一つの餅で確認してるから大丈夫だ」
「?」
ディーの弾ける汗が、揺れる胸から振り落とされる。
椿の人も、こうやって揺れる餅を見ながら餅つきしてたんだろうな。
フフッ良い文化だ。彼女の胸を見ながら、心が暖かくなっていると、ディーさんがクシュンと可愛らしいくしゃみ。
だが、そのせいでペースが乱れ、俺の手に再び杵が命中する。
「んほぉぉ! 同じとこ二回打っちゃダメなのにぃ!!」
「す、すみません王よ」
「いや、いいんだ」
ディーさんの二つの餅を監視していたからとは言えない。
餅が完成し、本来年を明けてから食べるつもりだったが、オリオンがどうしても今食いたいと言うので、ぜんざいにして皆に振る舞うことになった。
掃除中の魔軍や、フレイアたちも甘い餅と小豆に、喜びの声を上げていた。
俺もO張葵姫と共に武家屋敷の縁側でぜんざいを食す。
餅食ってると年の瀬って感じがして良き。
ふとぽつりと冷たいものが鼻先に当たる。
頭上を見上げると、白い雪が空から舞い降りていた。
「これは……積もるな」
シンシンと降る雪、実に風情がある。
せっかくだし、もう少し年末っぽいことをしたいなと思う。
「葵ちゃん、この辺神社とかないの? お参りとかしに行きたいんだけど」
「近くにありますよ。屍人のせいで無人になってしまっているかもしれませんが、雪願寺という寺が」
「ほー」
「なんでも願いが叶う薬があるとか」
「願いが……」
「まぁ噂なだけで、眉唾なんですけどね」
「行ってみるか。葵ちゃん一緒に来る?」
軽く誘ってみると、彼女は申し訳なさそうに首を横に振った。
「いえ、兄のお世話がありますので。それに、勧めておいてなんなのですが、階段がたくさんありまして。私の体力ではなかなか」
「なるほど。おいオリオン、お参り行くか?」
ぜんざいを一心不乱に食い漁る相棒にも声をかける。
「ムシャムシャムシャ」
「おーい」
「おかわり、ムシャムシャムシャ」
「無視!?」
ダメだ、今あいつはサバンナでシマウマを手に入れたライオンみたいになってる。餌に夢中で何も声が耳に入っていない。
「ソフィー、お前はどうだ?」
「わたし宗教違うので」
ぐうの音も出ない断り方だ。
その後レイランもアンデッドがお参りとか、頭痛くなるネと言われ、なかなか参加者が出てこない。
「銀河、お前は」
「はい、勿論行かせていただきます」
「あとは」
「私も一緒に行きましょう。護衛が銀河だけでは不安ですので」
先程一緒に餅を振ってくれたディーさんも一緒に来てくれる。
俺達三人は、葵ちゃんに教えてもらった雪願寺へと向かった。
まだ日暮れではないが、屋敷を出ると一気に冷え込む。
踏みしめる雪が、きゅっと小さな音を立てた。
「雪願寺は、ここから徒歩30分ほどのようですね」
「わかった。まぁブラブラ行こうぜ」
俺達がゆっくり歩いていくと、見えてきたのは山の斜面に延びる石段。
数えてはいないが、見上げるだけで気が遠くなるほど続いている。
石段の一段一段には、薄く雪が積もり、ところどころに古びた灯籠が立っている。
人の気配はなく、風が吹くたび、木々が低く唸るように鳴いた。
階段の先には、かすかに寺の屋根が見える。
「これは登るだけでも重労働だな」
葵ちゃんが、自分には無理と言っていたのがよくわかる。
「ジライヤさんで、一気にジャンプして上がりますか?」
「いや、今年のことを振り返りながら歩いて行こう」
三人で今年の話をしながら、長い石段を登り切ると、視界がひらけた。
そこが雪願寺の境内だった。
境内は思っていたよりも広く、踏み固められていない雪が一面に薄く積もっている。
人の往来が途絶えて久しいのだろう、足跡はほとんどなく、ただ風に削られた雪面が広がっている。
古びた本堂は雪の中に静かに佇み、軒下には風鈴の代わりに、割れかけた鈴が一つ吊るされている。
揺れているわけでもないのに、どこかで微かに音がした気がして、俺は思わず立ち止まった。
「……綺麗な場所ですね」
銀河が小声で呟く。
彼女は、どこか神秘的な雰囲気のある神社を見つめている。
ディーは一歩前に出て、境内を見渡した。
「椿独特の気配がある場所ですね」
「こういうのを風情があるという」
俺達は本堂の前に立ち、深く息を吸った。
吐く息は白く、胸の奥まで冷えた空気が入り込む。
賽銭箱は置かれており、その上に鈴緒が垂れ下がっている。
俺は軽く鈴を鳴らすと、銀河、ディー、それぞれ手を合わせ、目を閉じて願いをこめる。
俺も同じく手を合わせ、雪寺に願う。
「来年こそディーさんと結婚できますように、来年こそディーさんと結婚できますように」
「んっ、うん……お、王よ、そういう願いは口に出さないで下さい」
隣で祈るディーさんは、咳払いしつつ恥ずかしそうに顔を赤くしている。
「告白を続けて、なんとかディーさんがバクってOKしてくれるのを待ってる」
「相手のバグを待つ告白はやめて下さい」
「俺はディーさんがバグるなら、一万回でも告白するよ」
「ま、全く……」
金の横髪を耳にかける彼女の表情は、どこか満更でもなさそうに見えるが気のせいだろうか。
「それで、ディーは何願ったんだ?」
「私は皆がケガや病気をしないようにです」
「なるほど。銀河は?」
「自分はいつまでも、お館様の雌犬でいられるようにです」
屈託なく言う銀河。
よし、みんないつも通りだな。
来年はそれぞれの願いが叶ってくれることを祈る。
こうして俺達の年の瀬は過ぎ去っていくのだった。
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今年もお世話になりました。
来年もまたよろしくお願い致します。
皆さん良いお年を。
近況ノートだとどれだけ読まれたかわからないので、できれば読んでくれた方はいいね押してもらえると助かります。m(_ _)m