こんばんは、アカシアです。
やっといい感じに筆が進んでいるので、1話を近況ノートに出してみようと思います。
ここからもしかしたら設定が大幅に変わる可能性もあります。
タイトルは新しく隣に引っ越してきた隣人がバカうるさかったので壁ゴンしたら隣人はまさかの配信者であり学園のマドンナでした!
舞台袖は静かだった。
ホールの客席に満ちるざわめきが、分厚い幕と黒い壁に吸い込まれて、まるで別世界のようだった。
「|蒼麻《そうま》君、とうとうですね……」
俺の嫁であり、演奏のパートナーである|大宮《おおみや》|渚《なぎさ》が、小さく息を吸い、淡いパウダーブルーのドレスを指先で整える。ドレスの裾を整えている指先が僅かに震えていた。
「あの白聖女の天才フルート奏者でもこの舞台には緊張するんだな」
俺は少しでも緊張を和らげるため冗談めかした言葉を少し前で運手の確認をしている渚の隣に立って耳元で言ってみた。
俺が隣に立つとほんの少しだけ、表情が柔らかくなる。
「あの夜空をただただ眺めていたピアノ奏者は緊張してないんですね」
「そりゃあ、そうでしょ大宮蒼麻、渚ペアの演奏は最強って知ってるもんで」
そう言ってみせると、渚は小さく笑った。目元の緊張が少しだけほぐれて、|白藍《しらあい》色の髪が肩越しにゆれる。
「……ふふ。そんなの、ずるいですよ。
蒼麻君にそう言われたら、私、失敗できないじゃないですか」
「どのみち今日は俺の両親と凪と――」
「あの子達が来てますもんね……最高のお母さんを見せないと」
ステージのライトが、黒幕の隙間から差し込み、彼女のドレスをやわらかく照らす。ドレスの生地が光を帯び、彼女がまるで月光をまとったように見えた。凛としていて、それでいて儚く、気を抜けば触れることすら許されないような——そんな美しさだった。
『かっこいい~』と冗談めかして言うと、渚はふいに顔をそらして、少しだけ頬を赤らめた。
「もうっ、集中してください!」
「ありゃりゃ、怒られちゃった」
俺は小さく笑いながら、ピアノの鍵盤に手を置くイメージを胸の中で描いた。
この瞬間が、演奏の中でもっとも好きだ。ステージに出る前、まだ誰の目にも晒されていない、ただ二人だけの静けさ。そのなかに確かに存在する、目に見えない信頼。
「渚」
俺は呼んだ。その名前を、演奏者としてじゃなく、一人の愛する人として。
「……今日も音楽は最高の娯楽と証明しに行こう」
彼女は、そっと頷いた。
その頷きだけで、胸がいっぱいになるほどに、今の彼女は綺麗だった。
スタッフが静かに合図を送ってくる。幕が、間もなく上がる。
これは、あの騒音被害を訴える壁ゴンから始まった俺と最高の嫁――|天狼《てんろう》渚との出会いから始まる物語だ
ここで一つ疑問があるんですが、中学の修学旅行とか宿泊学習で、僕の通っていた中学校では壁ゴンっていう、思いっきり壁を台パンの要領で殴るノリがあったんですが、壁ゴンという単語は全国共通なのでしょうか?