二日だったしもうそろそろ一般公開でもいいかな(笑)
というわけで没バージョンの公開。
387話の冒頭部分が丸々変わっています。
書き換えたくなった理由は、
「何でカルロ位のポッと出キャラのナイフをココまで詳しく書いて作らなあかんのや?」
と思ってしまったためです(笑)
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シズラがクリンから衝動で作って趣味で改修した剣を買ってから一カ月と少し。前世の季節で言えば冬に入った十一月頃になるだろう。
この頃になればこの辺りでは雨が降る事が多くなる。
「前世のヨーロッパでも秋が過ぎる頃から雨が降るって言うし、気候も似ている感じだから、経緯度ももしかしたら近い地域なのかもね」
と言うのがクリンの見立てだ。何せ前世と植生が似ているし、全く同じではないが近在種が多数存在しているので、環境と気候が近いのではと考えている。
雨が多くなれば秋、その雨に雪が混じってきたら冬、と言うのがこの世界のこの地域での大体の季節感だ。まだ雪は混じっていないので晩秋と言った所だろう。
こうなってくるとクリンがブロランスの街で露店を開く頻度も下がって来る。単純に雨でぬかるんだ道をリヤカーもどきを曳いて行くのも億劫であるので、雨がやんで地面がしっかりしている時だけの商売に変わりつつある。
コレはブロランスに来た時から同じだ。最も、去年はも少し後の時期位にちょっとした騒ぎを起こした為に市場を出禁になってしまっているのだが。
それは兎も角、今日も小雨が降っているので露店は中止して拠点である森の中に引き籠っている。しかし、だからと言って暇を持て余している訳ではない。
「アレからカルロさんもマトモな物を持ち込む様になって、そろそろ鉄材の量もいい具合ですし、お金も何だかんだで目標金額に届きそうですしね。このタイミングで現物を作って置いても良いでしょう」
と、言う訳で鍛冶作業をする予定である。この少年が暇を持て余す訳が無い。
元々、作ろうと思えばもっと前に集めた砂鉄や屑鉄で作る事も可能だったのだが、折角だからカルロが自ら集めた鉄材で、剣鉈を作ってやろうと考えていたのだ。
「ただまぁ……流石に全部かき集めてもちょっと足りないですからね。他の屑鉄と混ぜて古鉄卸にして材料としましょうか」
今回作るのは武器としても使えるが、もっと雑な使い方をする剣鉈をイメージしている。玉鋼から作ってもいいが、やはり手荒い扱いをするのなら古鉄の方が向いている、と言うのがクリンの感覚だ。
「武器としても使うのですから……ココはやはり一尺刀(刃渡り三十センチの意味)でしょう。柄を十センチから十五センチ以内にすれば、全長は四十五センチ以内。それならカルロさんの体型的にギリギリ肘から指の第一関節辺りまでで収まる筈。微妙だとしても後一、二年もすれば余裕でナイフのサイズに収まる筈」
しかし、そのままではやはり戦闘用としてはやや物足りない。
「うん、身幅もグンと広く取って重ねも厚くしましょう。重量的に……このサイズでも六百グラム前後になるかなぁ?」
鉈と銘打つからには重量で断ち切る使い方が主流になる。ならばこれ位の重量感がある方が良いだろう、とクリンはイメージを固める。
尚、ナイフで重量六百グラムはかなりの重さだ。この世界のショートソードの重さが大体八百~九百グラムである事を考えればナイフの範囲を十分ぶっちぎった化け物である。
前世日本ではこの剣鉈はナイフでは無く「その他の刃物」と言う事で包丁やノコギリなどと同じ扱いで銃刀法に引っかからない。この世界でもコレも普通にナイフとして通用してしまう。
どちらも割とガバガバな規制ではあるが、前世日本では剣鉈に戦闘を見越したグリップを付けたりガードを付けたりしたら剣と見なされる場合もあるので注意は必要だ。
此方の世界では魔物が居るので、戦闘に対応した造りをしてもサイズさえ越えなければ普通に護身用のナイフとして通じてしまう。その辺はやはり雑ではある。
――閑話休題――
ともかく、作る物の姿が決まったクリンは早速卸鉄用の炉を組み、炭に火をつけ炉を温める。
十分火が起こった頃合いでザラザラと屑鉄を炉に流し入れる。一旦炉を離れて水車小屋の方に向かいストッパーを外して鞴を動かし風を送る。