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第10話 安倍内親王誕生と長屋王のグラス 投稿しました

https://kakuyomu.jp/works/822139837796390515/episodes/822139838679436608


初夏の光の中、光明子は安倍内親王を出産した。
柔らかな産着の香、笠目の琵琶の音、サチの涙。
そして、長屋王から届いたのは、七色に光を返すガラスの杯。

「美しい……」
光にかざすと、部屋いっぱいに虹が咲く。
あたしはその輝きに、未来の希望を見た――はずだった。

だが、笠目の声が静かに落ちる。
「この色……少し、冷たうございますね」

祝いの香の向こうで、風がざわめく。
遠く、鼓の音。喜びの音にも似て、どこか不吉な調べ。

幸福の夜に、運命の歯車がそっと回り始める。

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