甥が私に教えてくれた。彼の中学校で怪談話が流行っているらしい。また、それらの怪談話からホラーブームが起きているとのこと。私はその話に興味を持ち、甥に話を聞いてみることにした。
また、甥に頼み、彼の中学で話を集めてもらう。今の時代、スマホがあれば録音は簡単なので、私がそれを元に文字へ起こす。きっと面白いものができる予感がしていた。
最初に甥が教えてくれたのはサキュバス怪談という話だった。怪談というよりは、猥談のような印象を受ける。私含め男というものは、猥談が大好きな生き物なのだろうか。
サキュバス怪談のあらましはこうだ。甥の中学では明晰夢を見る方法が流行り、そこから夢の中で美女と過ごす裏技なるものが流行ったという。
裏技を使えば夢の中に美女を呼び出し、あんなことや、こんなことができるという。しかし良いことばかりではなく、その裏技を使うと体に痒みや肌の異変が起きるそうだ。
痒み、肌の異変。それらは性病を思わせるものであると甥は言う。甥っ子も中学生だし、そういう知識を持つものだろう。将来彼が変な病気をもらったりしないようにと祈る。
性病というワードは子どもらしくないものだと思う。まあ、怪談としてはありがちというか、体に異変が起きるというオチは分かりやすい。異変が身近な分、あると嫌だなという生々しさが想像しやすくて良い。
例えば性病をテーマにした怪談にはこんなものがある。あるバーで出会った美女と男が、ホテルに行き一夜を過ごした。男が目を覚ますと美女は姿を消している。部屋の鏡に『性病の世界へようこそ』と口紅で書かれていた。なんてオチ。
男女逆のパターンもあるし、最後に相手が性病を持っていたと知るパターンはいくつも存在する。今回、甥が話してくれたサキュバス怪談は、それらの怪談を改造したものと思われる。
しかし、サキュバスか。そこはファンタジーというか、子どもっぽいと思ってしまった。恐ろしさは薄れるが、とっかかりやすい話にはなるかもしれない。オチは少しアレではあるが。
サキュバス……中世の民間伝承に語られる女の悪魔。夢の中で男を誘惑するとされるが、真の姿は醜悪なものであるとも言われる。最近のファンタジー作品なんかでは単にエロティックな存在として語られることも多い。やはり、その辺は中学生男子のセンスなのだろう。ある意味、ほほえましい。
ちなみに、裏技というものは、どんなものかと甥に聞いた。彼は意地悪そうに笑って「それを知ったら、叔父さんが試しちゃうといけないから」と言った。私は甥からすると、そんな話を本気にして試すとでも思われているのだろうか。
小さなショックを受けつつも、今後も中学校の怪談を集めるため、定期的に連絡を取り合う約束をした。