まだ飛べないゆきちゃんへ
もしゆきちゃんがこの手紙を読んでいるのなら、きっと私はもう翼を広げ、あの空へと飛び立ってしまったのだろう。冬の冷たい日、指を絡めながら二人で何度も見上げた、あの空へ。
私は冬の空をよく思い出す。ゆきちゃんがそっと囁いてくれた言葉に、凍えていた心がどれほど温められたのかを思い出させてくれるから。
いつか、互いの手を強く握りしめて、すべてを背中に置き去りにして、私たちだけしか知らない、誰にも見つからない場所へ行こうと約束したよね。
なのに、ごめんね。心の奥で今も血を流し続ける傷を越えるだけの勇気を持てるようになる前に、私は飛び立ってしまった。自分なりの理屈のために、あるいは、それはただの身勝手な言い訳だったのかもしれない。
それでも私はきっと大丈夫だから。だから安心してね、私だけの大切なゆきちゃん。
ゆきちゃんがいない地平へたどり着くことになるのだとしても、ゆきちゃんが私だけに伝えてくれたあの「愛してる」は、ずっと胸に刻み続ける。
たとえ私の影がこの世界から消えてしまっても、私たちの記憶だけは残り続ける。私たちがどれほど幸せに寄り添っていたのか、その証として。
ゆきちゃんがあの小さな通りを歩くたび、二人で腰掛けたあのベンチにそっと座るたび、私はきっとそこにいる。
けれどそれはもう、ゆきちゃんの心の中でぼんやりと揺れる、一つの古いフィルムのような存在でしかないのだろう。
でも、それでいい。
それだけで、もう十分なんだ。
だって私は、ようやく自分の翼を手に入れたのだから。