自由になった、という気分でいっぱいです。
ずっと私の脳で胎動していた物語が、依代を脳から文字へと移し替えられて、憑き物が落ちたようにほっとしました。ようやく楽になりました。
私はもともとイラスト・キャラクター創作界隈に馴染みがあり、既存キャラクターの「棺」を作るために「SPELL」を記した経緯があります。始まりから終わりまで連続して収束する、ちゃんとした小説を執筆するのはおそらく初めてのことでした。私は個キャラクターを突き詰めるよりも世界観や秩序を一から作り上げる作業が楽しいようです。世界と事象の相関や対比的構造を自分の手だけであやなすことが好きなようです。
今や私の創作の方向性をひとつ照らしてくれた小説というジャンルに感謝と友愛を覚えます。私は今まで、小説に真剣な人間ではありませんでしたので。文章のことは友人でしたけど、私にとって小説は友人よりも遠い存在でした。今では少し心を打ち明けた存在です。
私は時間が経つにつれ自分の作品が気に入らなくなる性質です。ギャー!と心中叫びながら過去の作品を見ると、絵の方は最近離れているからまあ見れる。文章の方がかえってギャー!に思える。うう、許せない……。と思い出し悶えて、居ても立っても居られずもう一度見返しました。
結論、悪かない。正面から見たらさほど悪くなかった。今回はその悪かない一節をここに置きたくて、近況ノートを記しております。それにしては前置きが長くなってしまいましたね。
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「恋はきみの心に羽を与えもすれば、鎖で縛りつけもする。朝を奪って夜を永くする。きみだけの太陽と月をひとつ増やしだってするかもしれないね。その天変の果てをみにいって帰ってきた芸術家は美しい音を奏でる。
怪物『誰がためのソナタ』の美学は、いってしまえば、それだけのものだよ。」
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これは数千字程度のSSの抜粋になります。
筆が乗ったんだろね、という感慨があります。私と小説との親しくなさが伝わるセリフでもあります。しかし物語の構造にこのような歌を乗せること、その組み立て作業が、なんとまあ脳が痺れるくらい楽しい。
またなにか組み立てたいです。世界の歯車を。
何度かシンプルな仕組みの小説で手首をほぐして、もう少し柔軟にしてから、なにか描こうという気概でおります。
一度「書く」という選択肢が増えると、さまざまな案が浮かんで頭が逼迫してしまいますね。なんとか選り分けて、実現可能な範囲を拾っていくよう努めます。
ゆりかもめ団