※軍記物、戦争史に詳しいわけではありません。その点をさしひいて御覧ください。
小説『銀河英雄伝説』を読んでいるとわかる、「宇宙戦艦ヤマト(リメイクヤマト)」とのスペースオペラ感のちがい。スペオペなら『クラッシャージョウ』と比べるべきなのかもしれませんが今回はおいておきます。
銀河英雄伝説は完全に戦争物で、艦隊や兵士をどう運用するかという話になるのですが、ヤマトは単独でいかに困難をのりこえるかという話なので、補給や陣形についてはあまり語られません。ヤマトは戦争というよりは「旅」を描く作品なので、このちがいは当然といえます。
ヤマトの戦いは「宇宙軍艦同士のドッグファイト」に近いので、短い時間で戦闘が終わる傾向にあります。一方、銀河英雄伝説は、一度の戦闘が何日にもおよぶことが頻繁にあるので、補給を非常に大事にしますし、艦隊がのびきることを危惧する場面も多々あります。
それでも銀河英雄伝説みたいな戦闘がまったくないかといえば、「宇宙戦艦ヤマト2199」のドメル提督のヤマトに圧力をかける戦略がそれっぽいといえます。
戦争を描いているヤマトといえば、「宇宙戦艦ヤマト2202」があてはまります。しかし、あれは互いに圧倒的物量をぶつけあう戦争なので、ヤン・ウェンリーやラインハルトといった用兵の達人がはいりこむ余地がありません。
ヤンのいう「多数で少数を叩く」という用兵の王道に近いのですが、どちらも多数なので被害が尋常ではありません。
しかも、銀河英雄伝説でよく使われる、挟撃、分断、凹型陣形といったものがまったく通用しません。敵艦隊に挟撃をしかけても分断を試みても叩きつぶされることは明らかですし、凹型陣形なんてとろうものなら、物量で突破されます。
ヤマトの戦争はそういう形だったので、基本戦術が「マルチ隊形(艦をずらりと並べて波動砲を一斉射する戦術)」になります。
なお、ヤマトにおいて最初の大きな戦争……火星沖海戦では、圧倒的不利を戦術と新兵器ショックカノンで覆したようですが、詳細は明らかになっていません。
先にも述べたように、「銀河英雄伝説」は戦争とそこにあらわれる英雄を描いているのに対し、「宇宙戦艦ヤマト」は長い旅と戦艦一隻で困難をのりこえる物語を描いているので、同じスペースオペラではありますが、単純に比較することはできません。
ただ、たまには名作同士を比べてみるのも面白いかなと思いました。