「はっ? ここはどこじゃ……?」
「おっ、爺さん、気がついたか」
「何じゃお主は……!? 人間じゃない!? 鱗と尾が生えとる!?」
「アンタは人間だな。俺はソルレオン。人魚の国の国王……だった。アンタは?」
「儂はベルグハーフェンの領主兼商業ギルド長、バルタザール・ポルテじゃ――いや、今となっては元、領主じゃ」
「アンタも死んじまったようだな。まあ、俺もそうだが。因みに、たぶん俺の方が長生きだぜ」
「そうなのか。これは失礼した」
「いや、お互いもう死んじまってるんだから、気楽にいこうぜ。『酩酊クラゲ』もあることだし」
「何じゃ? その『酩酊クラゲ』というのは? 酒はないのか?」
「酒? あのたまに樽や瓶で沈んでいるやつか? んなもんあるわけない――は? 戸棚の中に、現れたぞ……?」
「何!? ……本当じゃ。こんなことがあるんじゃのう……!? な、何じゃと!?」
「どうしたんだ?」
「これは……儂が生まれた歳に作られたワインじゃ……確か、父にプレゼントされたものじゃ……」
「良かったな。そんなものがあるなんて」
「他のものも見覚えのあるものばかりじゃ……まさか……神はいるのか……?」
「さあな。もしいるなら深海でも溺れないやつの方がいいな。どういう形でいるのかいないのかは分からないけど。ただ少なくとも、ちょっとした遊び心は分かっていそうじゃないか?」
「……そうじゃな」
「じゃあバルタザール。その酒と『酩酊クラゲ』で楽しもうぜ。深海じゃ酒は飲めなかったからな」
「いいじゃろう。その『酩酊クラゲ』とやらも味わってみたいからの」