とはいえ、超地味!
女子主人公ものが少なそうだったので、久々に女子主人公にしてみました。短いからたまにはいいかなと。
あ、主人公の名前、どっかで見たことあるとおもったら、悪食のエステルさんだった。
全然違う性格にしているので別ものっす。
今回はセリフ間、空行入れるか迷い中。
十話かけそうだったら投稿しまっす。
「う、うう。おかあさあん」
真っ暗闇。突然の真っ暗闇にしゃがみ込み、一人泣いていた。
お母さんはどこ? わたし、このまま独りぼっちになっちゃうのかな。
「おい。大丈夫か。お嬢ちゃん」
男の人の声。どこかお父さんにも似ている。
「わたしが見えるの?」
「おう。見えるさ。暗くても、分かるんだ。そこにいるってな」
彼の言葉が真実かと示すように大きな手が泣きじゃくるわたしの頭に乗せられた。
手から彼の暖かさが伝わってきて、不思議と落ち着き、自然と涙が止まる。
「いま明るくする。そのまま待っててくれ。なあに心配することはねえ。すぐだすぐ」
「うん」
パッと明るくなり、ぎこちなく笑う男の人がわたしの前でしゃがみ込み、再び頭を撫でてくれた。
彼に抱えられ、無事、迷子になったわたしは家に帰ることができたんだ。
これが、わたしと彼らとの出会い。
騎士様でもない。
白馬の王子様でもない。
ダンジョンの灯りを守る頼りになる職人さん。
だけど、わたしの憧れはこの人たち!
本当に、本当にかっこよかったんだから!
この事件で強く明かりを修理する彼らの仕事に強く惹かれたわたしは、彼らと同じようになりたいと強く願うようになる。
◇◇◇
事件から10年後。
六歳だったわたしも、もう一人前になる十六歳になった。
さあ、行くぞ。
拳をぎゅっと握りしめ、「ダンジョン保守ギルド」の前に立つ。
あの日、わたしを助けてくれたあの人もここで働くギルド職員さんだったの!
コンコン。
胸に手をあて、大きく息を吸いこむ。
「失礼します!」
扉を叩き、精一杯声を張り上げて、ペコリと頭を下げた。
うわあ。
思わず声が出そうになる。
ここが、憧れの「ダンジョン光保守ギルド」なんだもの!
探索者ギルドの一角に間借りした小さな事務所。
だけど、わたしにとっては誰よりもカッコいい人たちが働く職場なんだ!
カウンターがあって、頬杖をついたツンツン頭の男の人が、挨拶をするわたしに反応して立ち上がってくれた。
頭に手をやった男の人が眠たげにもう一方の手で口元に手をやる。
もしかしたら「あの人」かも、と思ったけど違った。彼の年のころは30代半ばほどで、涼やかな目をした人だったのだから。
あの人なら、彼より十歳ほど年嵩なんだもの。
幼い日の記憶だけど、わたしがあの人を間違うはずはないんだから。
「はじめまして。エステルです! 今日からお世話になります!」
「そういや、今日から一人来るって爺さんが言ってたな」
そう言って後ろへ顔を向けた男の人が声を張る。
「おーい。爺さん」
「ん。もう仕事か」
「違うって。ちょ、おい」
奥からリュックが飛んできて、おいおいと男の人がそれを受けとめた。
「あー。なんだ。俺はヒューイ。早速だけど仕事だ。今日のところはここで待機でもいいぞ」
「わたしも付いて行っていいですか……?」
絶対邪魔だよね、と思っていても、憧れのダンジョン保守ギルドなんだもの。
見ているだけしかできなくても一緒に行きたいよ!
「一階だし、全然大丈夫だぞ。となると、まずは着替えだな」
ヒューイさんがわたしの足先から頭の上へ目線を動かす。
彼の視線に嫌らしいものが一切なく、それどころか、急に厳しい目になり、身が引き締まる思いになり、自然と背筋が伸びる。
さきほどまで欠伸をかみ殺していた彼とは全くの別人のような変わりぶりだったのだから。
「エステルのサイズがあったっけかなあ」
ちょいちょいと手招きされ、彼の後ろをついて行く。
カウンター右の部屋はワードロープになっていて、ロッカーを開けたヒューイさんがツナギを出しては入れ、出しては入れを繰り返している。
「これが一番小さいが」
スッとわたしの前に山吹色のツナギを掲げるヒューイさん。
ほんとに着ていいの!?
憧れの保守ギルドの制服を遂にわたしも……。
「あ」
「ちょいと大きいみたいだな」
「大丈夫です! 絶対大丈夫ですから!」
「お、おう」
ちょうだいちょうだいと子供のように大げさな身振り手振りで主張したら、ポンとヒューイさんがわたしの手に憧れのツナギを乗せてくれたんだ!
思わずツナギを抱きしめ、だらしなく頬が緩んでしまう。
「え、えへへ」
いいんだよね。
ヒューイさんがわたしに渡してくれたんだもの!
「待て。俺は爺さんところで着替えるから」
「え。あ……」
着替えることしか頭になくって、つい脱ぎ始めちゃった。
初日からヒューイさんを困らせちゃったよ。
脱いだことではなく、迷惑をかけちゃった羞恥から頬が熱くなる。
「見てない、見てないから。あんたはここで着替えろ。着替えたらカウンターのところに来てくれ」
ボリボリと頭をかき、自分のツナギを掴んだヒューイさんが部屋を去って行く。
「あー、やっちゃったあ」
その場でしゃがみ込み、頭を抱えるも、山吹色のツナギが目に映るとつい頬が緩んでしまうダメなわたし。
「一通り道具を持ってくか?」
「是非!」
大き目のリュックはずしりと重たい。ここに「ダンジョン光保守ギルド」の全てが詰まっている!
「あとはこいつだな」
「はい!」
ヒューイさんから最後に渡されたのは脚立だ。
脚立はリュックに引っかけるようにして持ち運ぶことができるようになっていた。
「そいつがあれば、あんたの背丈でも届く」
「手を伸ばしても(魔道具に)届かないので、嬉しいです」
「俺も届かないところがあるから同じさ。脚立は必須だぜ」
「よいしょ」
脚立も含めたリュックの重みが肩にのしかかる。
「歩いてみろ」
「ぜんぜん平気です!」
これが本物の責任の重さなんだね! 感動!
スキップを踏んで軽くジャンプして見せた。
「結構な重量なんだが、いけそうだな……」
「この日のために、リュックに石を詰めて練習していたんですよ!」
「お、おう……」
ヒューイさんの額からたらりと汗が流れた気がしたけど、気のせいよね。
この日のために、いっぱいいっぱい練習したんだから!
準備ができたヒューイさんに連れられ「ダンジョン光保守ギルド」職員として初のダンジョンへと向かう。