• 現代ファンタジー
  • ホラー

第25話 夜闇に響く咆哮

夜の底──

ひとりの青年は
初めて自らの存在を

〝生きていてよいもの〟として
差し出される


名を与えられること
家族と呼ばれること

それは
野に棄てられた獣の胸へ
遅すぎる春を運ぶ静かな奇跡だった


だが──

安らぎの余韻を裂くように
古き桜の下ではひとつの儀式が始まる


護符は白く燃え
枝は蛇のごとく蠢き
人ならざる爪と荒れ狂う力が
深紅の眠りへと収束してゆく


涙を呑み
命を削り
なお届かせようとする祈り


その夜
闇を震わせた咆哮は

失われたものを呼び戻すための
あまりにも切実な産声となる



紅蓮の嚮後 〜桜の鎮魂歌〜
第25話 夜闇に響く咆哮

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する