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Eden【番外編】恋愛は難しい

こんばんは。通院モグラです。

いつも拙作への温かいコメント、ありがとうございます…!


最近時間をとってEdenの本編を書き進める暇が確保できなかったので、
頭を空っぽにして、やったことのない会話劇を書いてみたら何か新しい発見がないかな…と、チャレンジしてみたのですが。
よりによって書き手が苦手だと自覚のある恋愛ネタで書いてみてしまい、見事に没になりました。

没ではあるのですが、キャラの身の上話的な意味では本編準拠なので、これはこれでネタとして公開してみます(笑)

それでは恋愛観というには壊滅的すぎる会話劇の模様をお楽しみください。




◤Eden/番外編
 「生存確認」◢


ハンニバル「……ねえ、恋バナしない?」
エデン「……何のブリーフィングですか」
トリガー「戦況報告より面倒そうだな」
ハンニバル「面倒くさがらない。命の境界で働く我々にもさ、たまには心の栄養が必要なわけ。恋バナ・カンファレンス、今ここに開幕!」
エデン:「カンファレンス……?」
トリガー:「議題:『J-MET12に、恋人を持てる人間は存在するか』。結論は出ている気がするが、暇つぶしにはなる」
ハンニバル:「ちょっとトリガー、開幕から絶望的なのやめて。希望を持たせて」
エデン:「……恋人」
ハンニバル:「そう、恋人。エデンはさ、欲しいとか思ったことないの?」
エデン:「……恋人、って……護衛対象、ですか」
ハンニバル:「違うよ。いや、まあ、半分は守るかもしれないけど……なんかこう、一緒にいたくなる人?」
エデン:「……任務外行動が多い対象、ってことですか」
トリガー:「それは厄介者の定義だな」
ハンニバル:「やかましいよ。てか、トリガーってさ」
トリガー「ん」
ハンニバル「恋人、いたことあんの? 元カノとかさ」
トリガー:「……“元カノ”という分類に入るのかは不明だが、かつて俺に好意を持っていた人間はいたらしい」
エデン:「“らしい”?」
トリガー:「後から第三者経由で聞いた」
ハンニバル:「気づけよ!」
トリガー:「その時期、俺は高度五千メートルで無人機と殴り合っていた。下界の空気は届かない」
ハンニバル:「この人、酸素薄いところに住んでた弊害がここに……」
トリガー:「それに、恋人を持つのは非効率だ」
ハンニバル:「出たよ合理主義」
トリガー:「フライトスケジュールは不規則、任務は機密、いつ落ちるかもわからない。そんな存在と関係性を結ぶのは、相手にとっても損失だ」
エデン:「……損失」
ハンニバル:「…まあ、わかんなくもないけどさ」
トリガー「それに、俺の性癖は空だ」
ハンニバル「今なんて???」
エデン:「……」
トリガー:「空はいい。裏切らない。落ちても理由がはっきりしている。揚力不足か、速度か、構造欠陥か。人間みたいに“気持ちが冷めました”で墜ちたりしない」
ハンニバル:「突然性癖暴露するのやめてもらっていい?」
トリガー:「放送禁止用語ではない」
ハンニバル:「いやまあギリギリだけどさ!!」
トリガー:「事実は事実として申告する主義だ。空を踏んで、ねじって、揺らして、限界ギリギリまで鳴かせるのが楽しい」 
エデン:「……ナイトフォールの悲鳴なら、よく聞きます」
ハンニバル:「ていうかさ、性癖って自認してんの、マジでやばいからね?」
トリガー:「今さらだろう。お前もとうに知っている」
ハンニバル:「知ってるけど、改めて言われると“あ、この人まともな恋バナ一生できねえんだな”って確信するからやめて」
エデン:「……指揮官、恋バナできますか」
トリガー:「できるぞ。“今日はどんな角度で空に撃たれたいか”という」
ハンニバル:「それただの変態会議!!…よし、もうこうなったら“恋バナリハビリ”やろ。健全な恋愛力を身につけよう講座」
トリガー「その講師が、お前?」
エデン「……失敗フラグが見えます」
ハンニバル「お前らさあ!?一応、付き合った経験はあるからね!?ゼロじゃないからね!?こちとら実績者ですよ!」
トリガー:「では、聞こう。何人に振られた」
ハンニバル:「振られた前提で聞くのやめて!?あのね、まず言っとくけど、私から振ったパターンも……」
トリガー:「何人に振られた?」
ハンニバル:「…………三人」
トリガー:「思ったより少なかった」
ハンニバル:「なんで失望顔なのトリガー!?もっと不幸であれみたいな顔やめて!」
トリガー:「理由は」
ハンニバル:「一人目、“仕事忙しすぎて会えないから”」
トリガー:「まあ妥当だな」
ハンニバル:「二人目、“デート中に緊急連絡受けて、そのまま病院行ったから”」
エデン:「それは……」
トリガー:「仕事だろう」
ハンニバル:「でしょ!?」
トリガー:「だが、“恋人との時間”も仕事の一種としてスケジューリングしないお前の管理能力にも問題がある」
ハンニバル:「管理能力にダメ出しされた!?なんか今、カルテの書き方注意されるのと同じトーンで言われたんだけど!」
エデン:「……三人目は」
ハンニバル:「三人目は……“将来が見えない”って」
トリガー:「お前、何した」
ハンニバル:「当直明けでボロボロのまま、“子どもほしい?”って聞かれて、“今この状態で子ども作ったら虐待だよ。無理無理”って正直に答えたら」
エデン:「…………」
ハンニバル:「“ごめんね”って笑われて、そのまんま、別れ話」
トリガー:「……」
エデン:「……」
ハンニバル:「……なに、その“手術は成功だが患者は死んだ”みたいな空気」
トリガー:「お前ほど人の心を踏むセンスが高い医者も珍しい」
ハンニバル:「それ一番人の心ないやつに言われたくないランキング第一位なんだけど!?」
エデン:「……ハンニバル、は。人の心、あります」
トリガー:「そうだ。ある。だが運用が壊滅的だ」
ハンニバル:「お前が言うな祭り開催中?」
トリガー:「俺はそもそも“人の心”を標準装備していない前提で設計されている」
エデン:「……そんなことは、ないと……思います」
トリガー:「エデン。お前は俺の何を見て“心がある”と判定した」
エデン:「……俺を、拾ったので」
ハンニバル:「はい優勝。そこの大佐、黙ってて」
トリガー:「感情的な判定だな。……さて。残るはお前か」
エデン:「……俺、ですか」
ハンニバル:「そう、君。元・殺す専門、今・救う練習中のエデンくん。恋人いたこと、ある?」
エデン:「……ないです」
トリガー:「ほう」
ハンニバル:「じゃ、終了」
トリガー:「いや待て」
エデン:「……?」
トリガー:「“ない”の定義による。“恋人”という言葉を説明した上で再回答させろ」
ハンニバル:「さすが法律家みたいな詰め方するね大佐」
トリガー:「俺は契約主義者だ」
ハンニバル:「エデン、“恋人”っていうのはね。“お互いに、恋人として振る舞うことに合意した人間”のこと。任務命令じゃなくて、“やろっか”って言って始める関係」
エデン:「……任務じゃ、ない」
ハンニバル:「うん。命令書も出ない。上官も関係ない。二人が勝手に決める」
エデン:「…………」
トリガー:「さて、再度聞こう。恋人はいたか」
エデン:「……いないと思います」
ハンニバル:「“思います”?」
トリガー:「曖昧だな。補足しろ」
エデン:「……昔の部隊で、“同じD系統”の女兵士を、“抱け”って命令されたことは、あります」
ハンニバル:「…………」
トリガー:「なるほど」
エデン:「“遊びだ”って……上官が。訓練と同じで、“経験させとけ”って」
ハンニバル:「それは恋人じゃないね」
エデン:「命令なので……断れませんでした」
ハンニバル:「……相手の子は、どういう顔してた?」
エデン:「……よく、見てません。暗い場所で。“寝ろ”って言われたので……命令通りに、しました」
トリガー:「感想は」
エデン:「……感想?」
トリガー:「戦闘後のレビューと同じだ。身体の反応でも、精神状態でもいい。何か記録はあるか」
エデン:「……訓練の一種だと思いました。呼吸が乱れて、体温が上がって、“任務中にこれをすると危ないな”って」
ハンニバル:「……お前の元上官、マジで全員まとめて私が外科的に解剖してやりたい」
トリガー:「臓器を並べて講義でもするか」
ハンニバル:「するね。医学生百人呼んで“これが人の心のない上官の肝臓です”って言うね」
エデン:「……それが、恋人とは、違うんですか」
ハンニバル:「全然違う。百八十度違う。別物。別惑星。別銀河」
トリガー:「お前のそれは、ただの人体実験だ。恋愛とは別カテゴリーに保管しろ」
エデン:「……はい」
ハンニバル:「ごめんね。なんか、変なこと思い出させて」
エデン:「……別に。もう、終わったことです」
トリガー:「終わっていないから、その眼をしてるんだろう」
エデン:「でも。“恋人”じゃないって、わかりました」
ハンニバル:「うん。だから君、恋愛経験ゼロ扱いでいい」
トリガー:「処女地だな」
ハンニバル:「言い方ァ!!」
エデン:「……じゃあ、恋人ができたら、何をするんですか」
ハンニバル:「人によって違うけどね。ご飯一緒に食べたり、映画見たり、散歩したり、くだらない話したり」
エデン:「任務報告?」
トリガー:「違う。非生産的な発話の連続だ」
ハンニバル:「ほんと黙って!? まあ……“相手が生きてるのを一緒に確認する時間”みたいなもんかな」
エデン:「……それなら、あります」
ハンニバル:「え?」
トリガー:「誰と」
エデン:「ナイトフォールの中で。出動の後、帰り道で……ハンニバル少佐が、“生きて帰れたねー”って、どうでもいい話を、たくさん、します」
ハンニバル:「……あー、あれね」
トリガー:「俺もそこにはいるが」
エデン:「でも、指揮官は、操縦してて。“空”を見てるから」
トリガー:「恋人との時間だな」
ハンニバル:「空を恋人扱いすな」
エデン:「……ああいう時間が、“恋人”っぽいなら。俺、少し、わかる気がします」
トリガー:「ほう」
ハンニバル:「へえ」
エデン:「ただ、名前が違うだけで。俺にとっては、“任務の結果、まだ生きてる時間”で。
     ――でも、“この人たちと一緒にいるなら、まだ、生きててもいいか”って、思う時間です」
ハンニバル:「…………」
トリガー:「少佐。泣くな。書類が濡れる」
ハンニバル:「泣いてない。鼻水出そうにはなったけど」
エデン:「……違いましたか」
ハンニバル:「いや、だいたい合ってる。やるじゃんエデン。恋愛偏差値、私より高いんじゃない?」
トリガー:「お前はマイナスだ」
ハンニバル:「辛辣ぅ!!……ねえ、トリガー」
トリガー:「なんだ」
ハンニバル:「次の出動の前にもさ、こういうくだらない話、またしていい?」
トリガー:「状況が許せばな」
エデン:「……俺は、いつでも、聞きます」
ハンニバル:「よし決定。J-MET12、定期恋バナカンファレンス創設」
トリガー:「そんな部隊規約は聞いていない」
ハンニバル:「第1条、“空の話は禁止”。以上」
トリガー:「解散だ」

8件のコメント

  •  おー、モグラさん。面白かったですよ。こういうライトなのも上手ですね。これ独立させてスピンオフにすればいいのに。
     特にトリガーのセリフがよいです。空が恋人ねえ。失敗しても原因が明らかだし、って、確かにそうですけど。
     ハンニバルは、恋人3人もいたんだ。なんか意外な感じだけど美人だし、お誘いはあるのかな。で、実態を知ると逃げていくというw
     最後はエデンのいい話で、綺麗にまとまって読後感爽やか。
     良いお話でした。って、★ぱらぱらできませーんて。
  • コメント失礼します。

    シリアスな現場から離れて恋バナに興じる三人が新鮮でした。空が性癖、という言葉は生まれて初めて聞いたかもしれません。
    恋愛とは縁遠そうな面々が、彼らなりの見解を持っていて興味深かったです。

    余談ですが、こういう会話のみの場面は難しいですね。登場人物の性格や考えがしっかりしていないと読者が混乱してしまうので。
  • >>小田島匠 先生

    うわ〜、ご感想をありがとうございます!面白かったと言って頂けてとても嬉しいです…!
    一般的にパイロットキャラって機体を「彼女」とか「相棒」のように扱うイメージあるのですが、トリガーは少しズレていて、機体はあくまで自身の体の延長で、空そのものと自分の身体感覚が接続される瞬間が好きでたまらない奴…という変態ぶりを今回発揮しております。
    トリガーのセリフ、堂々とおかしなことを喋るせいで逆に説得力ある感じになっているのでしょうか…笑

    ハンニバルは軍医という肩書きでモテるのだと思われます。国家公務員だし給料高いし、一般人から見たら優良物件、軍内部でも人数比が少ない女医ですからお声がけは頂く方なんだと思います。
    ただお察しの通りでございまして…笑

    お星様!お気持ちとても嬉しいです〜!
    いつか番外編シリーズでまとめて小説にしてみようと思います。
  • 「性癖は空」。トリガーさんのセリフに笑いが止まりませんでした😂
    ハンニバルさんが振られた理由は、もう納得しかありませんね……。
    そしてエデン😢しんどい過去だっただろうに、しんどさを理解できていない感じがいたたまれません……。
    「この人たちと一緒に生きていきたい」とも受け取れるような発言に、読者も涙です。
    とても楽しい番外編、ありがとうございます!
  • >>二ノ前はじめ 先生

    空が性癖……
    書いておいてなんですが、私も他に聞いたことありません。改めて見るとやばいセリフですね(笑)

    おっしゃる通り、今回の番外編はセリフだけでそのキャラの個性を出すにはどうしたらいいのか?という試みも含めてのチャレンジでした。

    自分の場合、キャラの発言については性格や思考回路であまり考えていなくて、以前読んでくださった拙作のノートで書いていたような、「そのキャラが世界を認知するときに核となる感覚」を基盤にする方法を採用しています。
    感覚拡張のパターンから、行動傾向、行動の理由、行動の形式、対人反応、台詞の語彙・構文・リズム、感情処理、ユーモアなどを導出して、それがそのキャラの「性格」や「考え方」として読者様に伝わる…という表現ができたら良いなという、妄想のもと今回セリフを構築しておりました(笑)
    そのキャラの一貫性を保ちつつ、多様な表現やセリフを出せるのに良い方法を研究してみたいですね…。

    先生がセリフを設計される時のお考えもいつか伺えたら嬉しいです…!


  • > ハンニバル「……ねえ、恋バナしない?」
    で、いきなり笑ってしまいました
    もしも短編として投稿してたら、小田島さん同様、私もこの段階で★をバラまいてましたね

    会話劇だと、なんかラジオドラマっぽい感じになりますね
    深夜の運転中に流れている感じです

    私も恋愛ネタには苦手意識がありますので、「通院モグラさん頑張って書いていらっしゃるなあ」と首を縦に振りつつ、楽しく読ませていただきました
    とはいえ、これはこれで良いトレーニングになりそうですね!
  • >>里 秋穂🌾 先生

    コメントありがとうございます。とても嬉しいです〜!
    このメンバーらしいネタトークとして書き始めたのですが、それぞれ違う方向の恋愛遍歴暴露になってしまいました(汗)
    エデンは本編でも自分の感情を掴めていない部分が多いのですが、恋愛がわからないからこそ核心を突ける部分もあるのかな…と、彼のキャラクター性を書き手としても再考するいい機会になりました。
    すごく共感もくださってありがとうございます…!
    引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。
  • >>あらまきさん

    ありがとうございます〜!
    ラジオドラマ!…実は自分も書いていて完全に深夜テンションだったのと、キャラたちもこれは深夜に喋ってそうだなと思いながら書いていて、今後の別ネタは深夜ラジオ形式でやってみようかなとか思ってたのです…。
    会話縛りは難しかったですが、普段のキャラのセリフの精度というか、出力の仕方や再現性についてまとめる良いトレーニングになりました。

    恋愛ネタが苦手…!?い、意外です。フィアーとラズリーちゃんのやりとりでニヤニヤしてしまういち読者としては、あらまきさんの恋愛ネタ展開も読んでみたいのに…!
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