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★9/16 陰キャンプスピンオフNO3 『木村 樹ルート』

「今週末はキャンプか?」

 週末に向けての準備をしている時、父さんがそう質問を投げかけてきた

「あ、うん、まぁ……」

「そっかぁ……」

 たぶん、今週末、バイトを頼みたかったのだろう。

 いずれ父さんにはしばらくバイトができない旨を伝えた方がよさそうだ。

 そして迎えた週末。
俺は最低限の装備品だけを持ち、樹の住む寮にほど近いキャンプ場にスーパーカブで向かってゆく。

 近年のキャンプブームが終了して久しいこと、そして真冬ということもあり、キャンプ場は閑散としていた。
でもそのおかげで、2ヶ月分の土日の予約が取れたのだから、俺にとってはありがたいことだった。

 テント、テーブル、椅子を広げて手早く設営を済ませた。
食パンにハムとチーズを挟んだけのサンドイッチで簡単に昼食を済ませ、そこからは特別に何もせずに時間を潰して行く。

 やがて、そろそろ頃合いだと思い、スマホを取り出してーー


A.KOUDUKI「プールの外で待ってる」


 樹へそうLINEを流し、時間を見計らってキャンプ場から山内学院高校の立派な屋内プールへと向かっていった。

 だけど17時を過ぎてもプールから誰かが出てくる気配は一切なかった。

 既読表示はおろか、樹からの返信もない。
たぶん、今も目の前の立派な屋内プールで練習に勤しんでいるのだろう。

 しかも今日は寒波が押し寄せてきているため、空気も冷たく、風も強く極寒だった。

 だけど、いつ樹が出てくるかわからないので、日が沈んでもなお俺はその場に留まり続けた。

 やがて周囲がすっかり暗くなった頃、立派な屋内プールから慌てた様子の人影が飛び出してくる。

「あ、葵っ!?」

 ようやく俺の姿を発見した樹は慌てた様子で駆け寄ってくる。
驚きと、喜びがないまぜとなっている表情だった。

「どうしてこんな時間まで!? そろそろ帰らないと危ないよ!?」

「大丈夫。今日はソロキャンしてるから。去年にその……みんなでクリキャンしたキャンプ場で……と、ところで! せっかくだしこれから飯でも……!」

「ごめん、葵……今日この後も寮でミーティングで……」

「そ、そっか……」

「で、でも! せっかく葵が来てくれたんーーっ!?」

 まだうっすらと湿っている樹の髪をワシワシと撫でる。
少し塩素の匂いが感じられ、まるで中学の頃へ戻ったかのように懐かしい。

「な、なんだよぉ! 湿ってるんだからあんまりぐしゃぐしゃするなよぉ!」

「ちゃんとミーティングに参加するって言うまで、ぐしゃぐしゃにしてやる」

「ううう……逆にご褒美になってるってわかんないかなぁ……」

「え? そうなのか? じゃあやめーー!?」

 手を離した途端、樹は爪先立ちをして、キスをしてくる。
唐突な樹からのキスは驚きもあって、俺の心臓ははち切れんばかりの鼓動を発している。

「わかったよ。葵がちゃんと行けっていうなら、ミーティングに出るよ」

「ああ、そうしてくれ。じゃあ、また明日な!」

 俺は平静を装ってスーパーカブに跨り、樹の前から走り去っていった。

 あのまま樹のそばにいれば、離れられなくなって、また迷惑をかけてしまうと思ったからだった。

ーーそうしてキャンプ場に戻った俺は夕飯として持ってきたカレー麺を食べるべく、お湯を沸かし始める。

 かつてソロキャンプばかりしていたころの夕飯といえば、これが俺の定番だった。
でも、これを懐かしむということは、俺はここ一年、相当美味いキャンプ飯を花守さんからご馳走になっていたのだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 と、キャンプ場の中へ突然響き出した、女の子の荒い息づかい。

 まさかと思ってカレー麺から視線をあげると、

「やっぱりカップラーメンだけだ! そんなんだと栄養偏っちゃうよ!」

「い、樹!? なんで!?」

 ジャージの上からダウンジャケットを羽織った樹は、俺に近づいてくるなりコンビニの袋を突き出してくる。
袋の中にはシーフード麺やら惣菜パンなどがぎっしりと詰まっている。

「ミーティング、予想以上に早く終わったから来ちゃった」

「本当か? 嘘ついてないか?」

「嘘じゃないよ、本当だよ! 僕のいうこと信じてよ!」

 そういう樹の顔は本当に真剣で。ならこれ以上はいくら冗談でも、突っ込まないほうが良いと思った。

 すると樹も俺の意志を察してくれたのか、ミーティングのことに関してはこれ以上何も言わず、テントの入り口付近にちょこんと腰を据えた。

「にしても差し入れにしちゃ多くないか? 俺を豚にするつもりか?」

「誰が全部、葵のだって言った? 僕の分もあるんだから。さっ、お湯沸かして!」

 俺は樹に促され、再びお湯を沸かした。
そして2人で、相変わらずのバカな会話を交えつつ、楽しい夕飯を済ませる。

 ふと時間が気になりスマホを見てみると、時間はちょうど20:30

「おい、樹、そろそろ帰らないとマズくないか?」

 樹の住む寮は門限が22時。おそらく樹は自転車で来ているだろうから、帰るのにどう短く見積もっても30分はかかってしまう。

「あ、うん……その前にさ……」

 急に潮らしくなった樹は、テントの中へ熱い視線を寄せる。
それだけで樹が何を望んでいるのか察した俺ではあったが……

「さすがにテントの中は……しかも冬だから寒くて、それどころじゃないぞ?」

「わ、わかってるよそんなこと! 僕を性欲モンスターみたくいうな!」

「わ、悪い……」

「でもちょっとだけ、そのぉ……葵と寝っ転がりたくて……」

 できないとしても、樹の体温を感じたい。
そう強く思った俺は、ランタンを消し、樹と共にテントの中へと入ってゆく。

「葵っ……」

「樹っ……」

 俺たちはたった一枚のシュラフを布団の代わりとし、互いの名前を呼び合って深く抱きしめ合った。
するとさも当然かのように俺たちはお互いの唇を近づけ合った。最初は啄む程度のものだったが、次第に深く舌を交え、唾液の交換を始める……そんなことをしていれば、当然、俺の雄の本能は覚醒するわけで……

 でもキャンプ場でそういうことをするのは抵抗があるため、必死に堪えていると……

「ーーっ!?」

 見透かしたように樹の手が、俺へ触れてきた。

「お、おい……やめろよ……」

「嬉しい……葵、僕とキスしてるだけでこんな風になってくれる……」

「ぐっ……」

 樹は俺の言葉などまるで無視をし、テントの中へジッパーの音を響かせる。
樹の冷たくなっている手が、俺の熱によって温まって行くのを感じる。
 
「葵が嫌じゃなかったら……これでもよかったらしてあげられるけど……どうする?」

 ここまでされて、ノーなんて言えるはずもなかった。
でもこうして樹の手玉に取られているのも、なんだか悔しい。
なので俺も、樹に手を伸ばした。

「ひゃっ!?」

「俺も、樹に……する。してやりたい」

「うう……葵の方が僕よりモンスターじゃん……だけど……」

 樹はコクンと頷く。

ーー俺たちはより一層深く絡みつき、必死に声を堪えて、お互いへ快楽を与え始めるのだった。

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