執務室にて……──
机の上に並ぶ書類。その一枚に目を通しながら、フェルクスがふと、声を出す。
「なあ、ガルシア」
「何でございましょう」
「一つ、思ったんだが……」
「はい」
「この邸は、男女比がおかしくないか?」
「……はい?」
「…………」
フェルクスが、書類からゆっくりと顔を上げれば、互いの視線が合う。しばしの間の後、問われたガルシアが一度コホンッと咳ばらいをして、呆れたように答えた。
「何を今さら。このような人員配置は、旦那様が致したことではありませんか」
「いや、まあ……確かにそうなんだが。ルミにとっては、良い環境ではないなと」
「それもずいぶん前に申し上げたはずですが」
「そう、だな……しかし」
「あの時、仰った言葉をお忘れですか?」
「……覚えているが……」
今いる者達で十分だ──そう言って、ガルシアの提案を一蹴した。
「……そう、だったな」
新たに人を入れるとなれば、邸のバランスが崩れかねない。やはり、それは避けるべきだろう。そう思いながら、机の新たな書類に手を伸ばす。
その間際、声が掠めた。
なんとなく気になって、フェルクスが立ち上がる。
そのまま窓辺に寄ると、階下に視線を流した。
「…………」
そこにはちょうど、ルミとカデム、セルトンが集まっていた。
そして何故か、ルミの傍にいるカデム。近くにはセルトンもいるのだから、関係を怪しむ必要は欠片もない。
だが……。
「…………ガルシア」
「はい」
「今すぐ侍女を手配してくれ。最低でも一人。出来れば二人。候補をすぐに、私が選ぶ」
「……」
短い沈黙の後、ガルシアが頭を下げる。
「畏まりました。後程お持ちします」
「最優先事項だ」
言いながら、扉へ向かう。ガルシアが首をかしげた。
「どちらへ?」
「少し外す。すぐに戻ってくる」
バタンと音が鳴り、扉が閉まる。残されたガルシアは、微かに息を吐いて、動き始めた。