都市集中型政策の下、東京湾を埋立地とする国家事業が45年ほど前に終了し、多くの国民がそこに移住を果たす。
神奈川県の久里浜と、その対岸にあたる千葉県の金谷港を結んで埋め立てて、その外側を新たに東京湾とした。内側の旧東京湾内1km沖を海水堀として人工都市を隆起させた ────
それが新設された 邪馬台区 だ。
夢の大規模国家事業は、この国の数ある歪みの先送りに成功する。
大和民族の割合は、中国や東南アジア、中東などをルーツとする帰化人(ネオジャパンネイティブ)を下回り、無事、OECD加盟国として多民族国家への移行で世界に共存する。
日本が失った代償も多いが、得た利益も大きい。
しかし、その両方を公平に享受した者なんてこの国に居たのだろうか?
同じ街に戻っても、君とは見えた未来が異なった。
それぞれの求める揺らめいた光へと ────
日本という名のアスファルトがオレ達の世界の片隅だった。
※この物語はフィクションです