あめがふると
おかあさんがむかえにくる
おかあさんがつぎつぎに
いろとりどりのかさをさしてむかえにくる
ひゃくにんくらいむかえにくる
ときどき
かさをわすれてくることもあるけれど
こどもとわらいあいながら
おかあさんはあめのなかにきえていく
かぜといっしょにくることもある
なきながらきたのは
ろくねんまえの
つめたあいいさんがつのうみに
きえてしまったおかあさん
あめのなかへ
ごねんにくみのむすこをつれてもかえれず
くつばこのなかの
よごれたうわぐつをみていた
あめをみあげるむすこにきづいても
こえをかけられずに
しずかにかえっていった
すねのながい
ひざのよごれたおとこのこは
あめがふると
しんだおかあさんが
むかえにくるようなきがして
いつもまっているのだった
あめをみあげると
そんなきがしてならなかった
しばらくするとおとこのこは
あめにぬれながらひとりかえっていった
いつもはすなぼこりにまみれたこうていに
しみるようなあめがやってきて
うみのようにみえた
なんどう照子「あめ」