「は!? マジかよ!!」
「え、ちょ、今の聞いた!?」
「蒼くんに告白した!? 神崎さんが!?」
男子たちは目を見開き、信じられないものを見るような視線が、一斉にこちらへと向けられた。対して女子たちは。
「きゃーーー!!!」
「ちょっと待って、やばいんだけど!!」
「何これ何これ、ドラマすぎる!!」
歓声と悲鳴が入り混じり、さっきまでの空気が嘘みたいに塗り替えられていく。
怒号も、罵声も、もうどこにもない。全員の関心は、完全に神崎さんの一言に奪われていた。
茜と葛原の存在ごと、かき消されるように。さっきまで中心にいたはずの二人は、まるで最初からいなかったかのように誰の視界にも入っていない。
その事実が、何より残酷だった。
「お、おい……蒼、どうすんだよこれ……」
隣のやつが小声で聞いてくるが、うまく言葉が出てこない。頭が追いついていない。
ただ、神崎さんの言葉だけが何度も反響していた。そんな中、ガラッと勢いよく教室のドアが開いた。
「おーい、お前ら席つけー。いつまで騒いでんだー」
間の悪い、いや、ちょうどいいタイミングで担任が入ってくる。一瞬で空気が現実に引き戻される。
「やべ、先生きた」
「ほら座れ座れ!」
その流れの中で、神崎さんがゆっくりと俺の方へ歩み寄る。
「蒼くん、返事はまた今度でいいです」
俺は何も言えず、ただ小さく頷くことしかできなかった。それからの二人は、教室の中で完全に孤立していった。誰も話しかけない。視線も向けない。名前すら呼ばれない。
まるで存在しないものとして扱われていた。
最初の数日は、まだどこか強がっていたように見えた。茜はいつも通りを装って、誰かに話しかけたり、笑おうとしたりしていた。
けれど返ってくるものは何もなかった。
それが何度も繰り返されるうちに、茜の表情から余裕は消えていった。
葛原も同じだった。何度か男子に声をかけていたが、適当に流されるか、最初から聞こえていないかのように扱われる。その度に、目に見えて顔色が悪くなっていった。
そんな異様な状態が続いていった。そして、ある日を境に、二人は学校に来なくなった。
最初は「体調不良じゃないか」とか、「そのうち戻ってくるだろ」といった声もあったが、それも長くは続かなかった。
数日が過ぎ、一週間が過ぎる頃には、誰も話題にしなくなっていた。本当に、最初からいなかったみたいに。
そんなある日の放課後、俺の家に来客があった。インターホン越しに名乗られた名前に、一瞬だけ言葉を失う。茜の両親だった。
扉を開けると、二人はどこか疲れ切った様子で立っていた。
「……あの、少しお時間よろしいでしょうか」
丁寧な口調だったが、その奥に焦りが滲んでいるのが分かる。話を聞けば、茜が学校に行かなくなった理由が分からないらしい。
何度聞いても、はっきり答えないのだという。だから、心当たりがあるなら教えてほしいとそう頭を下げられた。
正直迷いはあった。けど、曖昧に濁すことは違うと思った。その場で両親も呼び四人で向かい合う形になる。
そして、俺はこれまでの経緯をすべて話した。
浮気のこと。あの日の教室で起きたこと。
全部。
言葉にするたびに、空気が重く沈んでいくのが分かった。話し終えたあと、しばらく誰も口を開かなかった。
やがて、茜の母親が小さく頭を下げる。
「……申し訳、ありませんでした」
その声は、震えていた。
父親も続いて頭を下げる。
「本当に……ご迷惑をおかけしました」
責めるつもりなんてなかった。けど、その謝罪はあまりにも重かった。俺は何も言えず、ただ「いえ……」としか返せなかった。
それ以上、言葉は続かない。二人は何度も頭を下げてから帰っていった。
それ以降、家に来ることはなかった。
そして、いつの間にか、茜の家は引っ越していた。理由も、行き先も、誰も知らないまま。
一方で、葛原の方はというと。
詳しいことは、誰も知らなかった。
ただ、風の噂で学校を辞めたらしいと聞いただけだ。誰が言い出したのかも分からない。
けれど、それを確かめようとする人もいなかった。気づけば、二人ともこの場所からいなくなっていた。
これって必要でしたか?もうこいつらの話いいかなって、、、聖女様と蒼の関係の方が気になるかなと思って、飛ばしたんですけどいりました?
色んな方の意見がほしいです!コメントで教えてください!