未読の方にご案内します。この作品はラノベではなく、純文学として読んでいただくことをお勧めします。映画を一本観た後のような読書体験になるよう、文体を意識的に設計しました。そのため、全編でも一時間半以内、場合によってはそれ以下で読めます。プロットも一本道で、人間関係の複雑な絡み合いはなく、大学生の悩みがやがて恋愛逃亡劇へと拡大していく小品文学です。休日の何もすることがない夜などに、ストレスのない読書、あるいは暇つぶしとしてお読みいただければ嬉しいです。
唯一、知的な空気感を作り上げるための道具立てとして、最初からいくつか引っかかりのある哲学者の名前や知識を用いています。過剰だと感じられるかもしれない点も想定内ですが、深い理解がなくても後の物語を楽しむうえで影響はありません。読み飛ばしたい部分は読み飛ばしていただいて構いません。
最後まで読むと、まるでトンネルを通り抜けたような気分になる——それがこの作品の設計思想です。とはいえ、作者本人が想定した効用と、読者の実際の感想が必ずしも一致するとは限りません。もし届かなかったら、それは自分の力不足だと認めます。
まず、期待せずに気軽に読むのが正確な読み方です。この作者はセンスがないな、という批判意識を持ちながら読むのは、個人的には構いません。そして、読み切った時点でもその感想が変わらなければ、あらかじめお詫びします。けれど、この読書体験のなかで、心の中に「!」あるいは「!?」が一瞬でも浮かんだなら、それは作者である私の勝利だと言っていいでしょう。