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さて、最近ニュースで話題の「残価設定型住宅ローン」。車の残クレみたいに、家も残クレで買えるようになる……という話ですが……栄社長ならなんて言うかな?と考えてみました。
✱✱✱
「へー、すっげぇ!このタワマン、月々8万で住めんの!?なあ栄、これなら俺でも買えんじゃね?」
紫苑が新聞に折り込まれたチラシを見せる。栄はそれを一瞥すると、鼻で笑った。
「そのチラシの端をよく見てみろ。『※残価の精算が必要です』と書いてあるだろう」
「小っさ!読まねえよこんなとこ」
「車とかによくある残クレってやつだよ。いいか紫苑。例えばこれが5000万の物件だとして、3000万分の残クレを設定したとする。お前は『3000万円分は後回しだから、今は2000万円分だけの利息を払えばいい』と思ってないか?」
「違うの?」
「大間違いだ。銀行は『金を貸している』という事実がある以上、貸している全額に対して利息を請求する」
「えっ?じゃあ俺の3000万の残クレにも利子つくじゃん……!」
「そういうこと。普通のローンなら、返せば返すほど元金が減って、利息も減る。だが残クレは、この3000万がずっと居座り続けるせいで、利息が減らない。35年間せっせと家賃を払い続けたのに、一括返済できなかったらまたローンを組まされる。60代になってまで3000万頑張って返しましょうねって話だ。80歳まで設定できる」
「……80!?俺そんなジジイになってまで払わないといけないのかよ!終身刑じゃん!」
栄は冷ややかな目で、紫苑から取り上げたチラシをゴミ箱に放り投げた。
「本当に返済能力がある奴は、黙って『フラット35』や普通の銀行ローンを組む。その方が金利も総支払額も圧倒的に安いからな。あえて割高な残クレを選ぶ理由は一つしかない。『今の自分の稼ぎでは審査に通らないような、分不相応な夢』を買おうとしているからだ」
「うわぁ……相変わらずキツいこと言うな」
紫苑は無残に捨てられたゴミ箱のチラシを見た。
「キツいのは支払いの話だろ。銀行は親切に家を貸してくれるわけじゃない。 ……まあ、俺なら安易に勧めないね。あとは、」
栄は紫苑に向き合った。
「従業員貸付金も返せないようなヤツに、35年後残クレ一括返済分の貯金ができてるとは思わないけどな」
「その通りだけどやっぱお前性格悪いよ」
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※あくまで栄社長の極端な見解です。
※投資やローンの判断は、ご自身のライフプランに合わせて慎重にお願いします。
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