第八話の食事風景についてですが、歴史的には食事形式が実際の貴族社会と時代が合わないのではないか。という解説ですが、少し詳しく書いておきます。ちなみにこのコラムは、第一章コラム(三)料理と時代考証その(1)、の続きです。
(ちなみに作者はそんなに歴史に詳しいわけではないので、正確性は保証しません、と予防を張っておきましょう。間違っていたらごめんなさい)。
主人公のベルベットが次は何かな? とわくわくして料理を待つために、一斉並べではなくフルコース料理で出てくる形式を取りました。
フルコースのルーツは古代ローマ時代にまで遡るようですが、検索で調べると、一品ずつ順番に料理を提供するフルコース形式(ロシア式サービス。寒さで食事が冷めるため)は、十九世紀にフランスに伝わりました、と出てきました。
十九世紀なので近代ヨーロッパなのです。
このフルコース形式の料理を出すことは、本当に手間です。ずっと張り付き状態で作る羽目になります。そういうものは、今でも庶民の自宅料理ではありません。 ちょっと特別な料理です。この物語でも庶民は当然食べられません。
ちなみに中世ヨーロッパ(~十五世紀頃)では、貴族の料理は大皿で様々な料理が一度に全部食卓に並べられます。おまけに中世ヨーロッパを時代背景にしてしまうと、登場人物は手掴みで食べることになります(フィンガーボールのようなもので手を洗う)。
カトラリーで言えば歴史的には、食卓に共有のナイフから始まり、そのうちスプーンが登場し、最後はフォークになります。
十六世紀に、イタリアのカトリーヌ・ド・メディシスが、フランス王家にお嫁入りの時に持参したものが食文化を変えます。料理人、菓子職人も連れて来て、テーブルマナーの習慣も作っていきます。有名なお話です。
綺麗で上品な貴族社会でのお姫様という一般的なイメージを書くためには、設定を近代ヨーロッパにしなければなりません。これは十八世紀末から二十世紀前半頃になります。
一方、物語の舞台で、強い支配の王様を出し絶対王政にすると、十六世紀~十八世紀になってしまいます。これは近世ヨーロッパの時代です。(ちなみに、中世は諸侯貴族の力が強く、絶対王政はまだ確立していません)
その後は十八世紀末に有名なフランス革命が起こり、貨幣経済が浸透すると封建貴族の力は落ちていきます。近代ヨーロッパ時代の始まりです。
十七世紀以降プーン、フォーク、ナイフが広がり、一般的に普及し今の食事形式になるのも十九世紀頃のはずです。
つまり権力の強い王様がずっと継続在位して、エレガントに食事をする貴族を書くという設定は、かなり矛盾が生じるわけですね。
設定時代を絶対王政にしてしまうと、食事にはカトラリーの問題が出てきます。
中世に設定してしまうと、手づかみの食事風景を書くことになります(それも面白いかもしれませんが)。
もしくはエレガントに食事していた王や貴族が没落していく物語なら、時代考証的にはなんとか合いますね。
麗しい騎士が手づかみで食べ、恋を語るか?
今の読者に、手づかみで食べるお姫様が優雅に見えるか?
書きたいことが麗しい恋愛ファンタジーであれば、時代設定は近代と近世を混ぜるしかありません。
国によって風習も違います。時代背景も混ぜるのですから、もうごちゃ混ぜにしましょう。
ファンタジー小説に時代考証が要るのか? 答えから言うと、架空なのだから何でもありで不要です。
けれど歴史は参考にはします。
そして物語の中で、その物語の時代背景や制度をある程度は書くことにしました。
なぜなら、<登場人物はその設定された時代を生きて、小説内で動いている>からです。
人の考えや行動は、その時代背景やその体制からの影響受けます。
こういう状況で生きているから、この人はこういう動きや考えをします、を定めないと物語の展開ができません。
例えば、平安時代のお姫様はほとんど部屋から動きません。御簾や几帳で姿を隠します。つまり、表に出て顔をさらして動き回る高貴な姫様は、ぶっ飛んでいるわけです。型破りな平安お姫様の小説を書きたければ、壺装束も着けずに外を走り回らせればいい。
しかし現代女性が外を走り回っても、顔をさらして歩き回っても、型破りな女性にはなりません。
SFだったら、未来では空も平気で飛ぶのが当たり前かもしれません。現代社会で女主人公が空を飛べばエスパーです(男性でもエスパー)。
この小説は歴史ファンタジー恋愛小説、ちょっと冒険小説で、ある設定した時代背景での恋愛ファンタジーになっています。
恋愛物語では、通常は女の子が男子に出会う(girl-meets-boy)、男子が女の子に出会う(boy-meets-girl)という王道を踏みます。
もしくは青年が女性に出会う(A young man meets a woman)という年齢層も可能です。
やはりエレガントに食事をした方が良いでしょう。
歴史的恋愛ファンタジーを書くときに、王様が君臨して現代風に上品で麗しい貴族のいる中世ヨーロッパを思い浮かぶ人もいるでしょう。
例えば、『トリスタンとイゾルデ』みたいな世界です。
しかし、中世はそんなにエレガントではないというお話でした。
Wikipedia. (n.d.).ロシア料理, [オンライン],
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E6%96%99%E7%90%86#%E6%AD%B4%E5%8F%B2
2026/01/08 アクセス
Wikipedia. (n.d.).フランス料理, [オンライン],
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E6%96%99%E7%90%86
2026/01/08 アクセス
Wikipedia. (n.d.). トリスタンとイゾルデ, [オンライン],
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%82%BE%E3%83%AB%E3%83%87
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※なおこのコラム系では、校正をあまりかけていません。(誤字脱字チェックが緩いです)