『ピーちゃんのいた夏』(案)
【前提となる世界観】
・葉群ソーラーシステム
未来の都市では、地上や屋根だけではなく、空そのものが太陽光発電のための面積として利用されている。
都市上空には、気球の浮力と小型ドローンの推進力を組み合わせた、薄く柔軟なソーラーパネル群が浮遊している。
硬い板を並べるのではなく、樹木の葉のような柔軟な構造を持ち、無数の「葉」が集まって巨大な人工樹冠を形成している。
晴れれば葉を広げ、曇れば畳む。風が吹けば風を逃がす姿勢を取り、強風時には風力発電へ移行する。
制御は中央AIだけに頼らない。それぞれの葉群に簡単な判断能力があり、
• 光量
• 風速
• 温度
• 周囲の葉群
• 自身の発電効率
• 損傷状態
などを読みながら、自律的に振る舞う。
都市は結果として、巨大な森の木陰のようになる。
・シリコンの新陳代謝
葉群は壊れないことを目指していない。
壊れることを前提としている。
AIが常時パネルの状態を診断し、傷んだ葉を回収する。軽傷なら補修し、重傷なら分解。材料は再び新しい葉へと作り替えられる。
一枚のパネルを何十年も使うのではなく、
葉は死ぬ。しかし森は死なない。
という思想でシステム全体を維持する。
シリコン、銅、樹脂などが都市の中を循環する、新しい人工的な新陳代謝である。
・パーツスカウト
回収しきれず街へ落ちた軽量部品は、市民が拾う。
そのための商品が、
ソーラーパネル・パーツスカウター
32,500円(税込)
である。
スカウターを向けるとAIが素材や価値を判定する。部品をBACK-TERIA(BACK To Energy Recycle Industry Association)へ持ち込むとポイントがもらえ、金銭として利用できる。
パーツスカウトは単なるゴミ拾いではなく、巨大なゲーム文化になっている。
台風や雷雨の翌日はレアパーツが落ちる可能性が高いため、全国からプレイヤーが集まる。
上級者になると、気象図、風向、葉群の退避ルート、高度まで読み、落下地点を予測する。
企業もこの文化を利用している。
新型パーツを河川敷に仕込むイベントや、野外フェスでアイドルがサインしたレアパーツを放流する企画なども行われる。
人間の「探したい」「集めたい」という性質そのものが、人工生態系における分解者として利用されている。
【物語の前史】
・シリコン系とタンパク質系
かつて、次世代太陽光発電をめぐって二つの技術体系が争った。
一つは現在主流となったシリコン系。
もう一つが、生命工学を利用したタンパク質系ソーラーシステムだった。
タンパク質系は、生物自身が太陽光で発電するというより、生物が食物から得たエネルギーを使って光を操作する。
光を集め、方向を変え、シリコンパネルへ最適に照射する。
いわば生きた光学系である。
しかし、
「生命をそのように道具として作ってよいのか」
という倫理的反発、安全性、生態系への懸念、産業上の利害などが絡み、最終的にシリコン系が世界標準となった。
タンパク質系は歴史から姿を消した。
・生物兵器
その裏側では、タンパク質系の光制御能力が軍事転用されていた。
光をパネルへ集められるなら、観測者へ届く光を操作することもできる。
そこから、
光学迷彩
が生まれた。
さらに技術が進み、単に透明になるだけではなく、そこに存在しない映像を作り出せるようになる。
敵兵を味方兵に見せる。
誰もいない場所に兵士を見せる。
味方同士の相打ちを誘発する。
そして最後には、太陽光そのものを一点へ集中する光学攻撃へ発展した。
この生物兵器の基礎には、作品世界のさらに古い時代に篠原が残した研究成果——すなわち鬼化技術の転用——が存在する。
ただし、この設定は本編では語られない。
生物兵器には安全装置があった。
紫外線に極端に弱い。
逃亡しても太陽光によって死滅するため、野生化の危険は極めて低いと考えられていた。
しかし、ごく低確率で紫外線耐性突然変異が発生する。
その確率はゼロではない。
そして、何十年もの間、空のどこかにはその変異を起こした「奴」が生き残っていた。
人類が作ったシリコンの森に棲み、光学能力で衛星やドローンから身を隠し続けていた。
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【登場人物】
・雪村
高校生。
パーツスカウトのかなり上位に入るプレイヤー。
気象を読み、落下地点を予測する能力が高い。
理屈より先に身体が動くタイプで、異常に嗅覚が鋭い。
物語以前、サランラップを買いに行った帰りに、ダンプにはねられ崖から落ちた血まみれのおっさんを発見。
耳元のAIの指示に従い、持っていたラップなどを利用して止血し、通報する。
それによっておっさんは一命を取り留める。
・おっさん(夏目)
アロハシャツを着たスカウターギーク。
ガラクタだらけの部屋に住み、雪村のスカウターを勝手にゴテゴテ改造する。
実は極めて優秀な自衛官。
「奴」の痕跡を探す任務についており、地域のパーツスカウトたちを半ば無意識のセンサーネットワークとして利用していた。
雪村がランキング級のプレイヤーだと知り、命の恩人でもあることから迷った末、彼のスカウターにも特殊機能を仕込む。
ただし軍用データベースには接続しない。
DNAを含む未知の生体物質に反応するだけ。
雪村と奇妙な友情を築いているが、スカウターへ機能を仕込んだ時点から、最悪の場合には雪村を排除する覚悟もできている。
感情的葛藤で任務を曲げる人物ではない。
・上林
雪村の友人。
科学者志望のギーク。
分析能力が高く、自分の分析精度について非常にプライドが高い。
DNA解析から、生物兵器伝説と著しく一致する特徴を発見するが、
「俺は科学者を目指してるんだ。オカルトマニアじゃない」
と結果を認めたがらない。
雪村より慎重で、軍や監視システムの存在を察すると通信を断ち、手紙や直接接触などアナログな方法で仲間との情報交換を始める。
遥と湊の子孫、という裏設定。
姉は遥役の俳優が演じる。
姉は『ラストエンペラー』を観ている時に邪魔が入ると機嫌が悪い。
・坂本
上林の知人。
生物工学方面のギーク。
兵器については、
「遊びで調べてる程度」
と言う。
雪村が持ち帰ったDNAデータを解析する。
そして家庭用生体生成装置でヒヨコのクローンを作ろうとしていたところ、間違えて問題のDNAデータを選択。
偶然、生物兵器の個体を生成してしまう。
本人曰く、
「違うの! ボクはただヒヨコのクローンを作ろうとしてただけ!」
軍でも実現できなかったことを、偶然やってしまう。
重要なのは坂本本人の天才性だけではなく、坂本宅の生成装置に残ったオフライン生成ログ。
そこには、軍が何十年も再現できなかった生成条件へ迫る情報が残されている。
・ピーちゃん
坂本が誤って羽化させた生物兵器。
最初は小さく、可愛い。
三人はペットのように扱い、名前までつける。
しかし本来は、光を自在に操作するために開発された軍用生物。
透明化だけではなく、他人の姿を投影し、敵味方識別そのものを破壊できる。
当初は紫外線ですぐ死滅すると考えられていた。
ところが突然変異によって紫外線耐性を獲得してしまう。