【制作環境】『オフグリッダーズ』AI長編制作手法・現行版
『オフグリッダーズ』では、長編制作の一部に生成AIを使用しています。
ただし、基本原則は、
AIに物語を決めさせるのではなく、作者が決めた要件をAIで実装・検証する。
というものです。
現在は、おおむね以下の工程で制作しています。
1.要件定義 ―― AIが決めてよい範囲を決める
本文を書く前に、まず作品として守るべき条件を定義します。
世界観・物理法則
作品テーマ
キャラクターの行動原理
やってよいこと/やってはいけないこと
まだ決めていないこと
特に重要なのが、最後の**「まだ決めていないこと」**です。
AIは空白があると、それらしい設定で埋めようとすることがあります。
しかし、作者がまだ決めていないものを、本文生成の都合で勝手に確定されてしまうと、後の展開を狭める原因になります。
そのため、未確定事項は未確定のまま管理します。
ここでいう「設定」は、単にAIへ大量の情報を与えるためのものではありません。
設定とはAIへ与える情報量ではなく、AIが勝手に選択してよい範囲を制限するものでもある。
これが、現在の制作方法における重要な原則の一つです。
2.長編設計 ―― 「何を書かないか」も管理する
次に、物語全体を話単位へ分解します。
全体の到達点を決める
章ごとの役割を分ける
各話に「その話で必ず進むこと」を一つ置く
情報をどの話まで伏せるか決める
ここでは「何を書くか」だけではなく、何をまだ書いてはいけないかも決めています。
長編では、後で明かす予定だった情報をAIが「ここで説明したほうが自然」と判断し、先に書いてしまうことがあります。
一話だけを見れば親切な説明でも、長編全体では伏線や情報開示の順番を壊しかねません。
そのため、
長編管理では、「何を書くか」と同じくらい「まだ何を書かないか」を管理する。
これを、もう一つの基本原則にしています。
3.単話設計 ―― 一話が担当する範囲を決める
各話については、最低限、
前話から何を受け取るか
この話で何を変化させるか
次話へ何を渡すか
を確認します。
一話だけを読めば自然な文章でも、長編全体では後の展開を先食いしていることがあります。
逆に、その話で進めるべきものが何も進んでいなければ、文章として完成していても長編の一話としては機能しません。
そのため、単話としての完成度だけではなく、長編の中でその話が担当する範囲を決めてから本文を生成します。
4.本文生成 ―― 決めた範囲の中でAIに書かせる
本文生成では、それまでに確定した設定・プロットを上位の制約として扱います。
特に注意しているのは、
キャラクター自身の行動原理から場面を動かす
AIが便利な設定・能力・動機を勝手に追加しない
未確定事項を本文生成時に勝手に確定しない
後の話で開示する情報を先に説明しない
といった点です。
AIに「続きを自由に書いて」と任せるのではありません。
作者側で決めた範囲の中で、設計した場面を本文として実装させる。
現在の使い方は、こちらに近くなっています。
5.検証 ―― 「生成」と「評価」を分離する
生成された本文は、そのまま完成稿にはしません。
現在は、チェックする対象をある程度分けています。
構造面
因果関係
情報開示のタイミング
前後話との接続
プロットからの逸脱
人物面
会話
キャラクターの混線
不自然な説明台詞
行動原理との矛盾
設定面
必要に応じて、
世界設定との整合性
技術・能力の整合性
既存FIXとの矛盾
なども確認します。
ここでも重要なのは、評価AIの指摘をそのまま採用しないことです。
評価用のAIから問題を指摘されても、
「AIが指摘したから修正する」
とはしていません。
その指摘が本当に本文上の問題なのかを作者側でもう一度判断し、必要だと判断したものだけを修正します。
評価AIそのものが、存在しない台詞や設定を前提に評価してしまうこともあるためです。
AIによる評価もまた、検証対象の一つとして扱っています。
6.FIX ―― 確定した本文を基準点にする
必要な修正がなくなった本文を「FIX」とします。
FIX後は、
FIX版をその話の正本とする
後続話はFIX版を基準にする
後からAIが別案を提示しても、既存FIXを勝手に上書きしない
という形で管理しています。
これは長編になるほど重要になります。
AIは、同じ場面に対して毎回もっともらしい別案を作ることができます。
しかし、それを無制限に採用していくと、以前の話で確定した内容まで少しずつ変化し、作品全体の基準が失われていきます。
そのため、FIXは単なる「完成稿」というだけではなく、
「ここまでは確定しており、以後の制作はこれを前提とする」
という基準点でもあります。
現在の考え方
この方法で長編を制作していて感じるのは、生成AIによる長編制作では、単に**「良い文章を生成するプロンプト」だけでは足りない**ということです。
むしろ重要なのは、
何をAIに決めさせるのか。
何を作者が決めるのか。
何をまだ誰にも決めさせないのか。
この境界を管理することだと考えています。
『オフグリッダーズ』では現在、AIを物語そのものの決定者としてではなく、
作者が設計した物語を本文へ実装し、その結果を検証するための制作環境の一部
として使用しています。
そして、この方法自体もまだ完成形ではありません。
実際に長編を作る中で問題が見つかれば、プロンプトだけではなく制作工程そのものを変更することもあります。
したがって、ここに書いたものは「AI小説の正しい作り方」というものではなく、あくまで『オフグリッダーズ』を制作する中で組み上げてきた、現時点での制作手法です。